住友建機株式会社SUMITOMO

反応薄い「若手」には、上司が歩み寄れ!

Q

長年現場で施工管理しています。最近は特に若い人が、指示した段取りの内容をわかっていると思ったら、実は理解しておらず、指示とは違うことをしてしまうケースが増えています。本人に確認しても「わかりました」というのですが、私の説明力不足の問題でしょうか。アドバイスをお願いします。

A

私も20代の若手を教えているので、その悩みはよくわかります。指示がうまく伝わらない、理解していないのにわかったふりをするということが、他の現場でも起こっています。本人は納得していないのに質問もしないので困りますね。

背景には、若者のコミュニケーション不足があります。特に、ゲームやスマホに向き合う時間が長いほど、日常生活でも会話の経験が少なくなりがちです。チャットやLINEで用件を済ませることも珍しくありません。友達以外との会話を苦手とする人も多く、上司に対して自分の意見をあまり言わない傾向が見られます。

とはいえ、嘆いてばかりでは仕事になりません。まず、若者と自分の物差しが違うという現実を受け入れましょう。同じ用語でも、使い方や理解の仕方が異なっているのです。

上司のほうから歩み寄り、若手に合わせてやってください。試しに、チャットでコミュニケーションを取るのはどうでしょうか。私の知る限りでも、協力会社も含めて、図面や指示をチャットで共有している会社があります。命令調や説教口調にならなければ、若手も質問をしやすいようです。

ただし、規模の小さい現場では、チャットを利用しているケースは少ないようです。ならば、現場で面と向かったとき、どのような指示の出し方をすればよいか。前提となるのが、感情を強く出さず、話しやすい雰囲気をつくることです。
その上で、「若手は段取りの全体像が見えていない」と理解し、指示の理由や目的を丁寧に説明してあげてください。

例えば「この材料をそこに置いておいて」と言うだけでなく、その材料の用途は何か、なぜその場所に置く必要があるのか付け加えるのです。

「これは建具屋が使う建材だから、とりあえずここに仮置きして、現場を引き揚げるときには雨などで濡れないように屋内にしまう必要がある」と伝えれば、若手も背景を理解し、以降、応用が利くようになります。気の利く人なら、指示を待たずに確認してから建材を屋内にしまってくれるでしょう。

作業の先を読めるように指示した後は、理解を誘導するよう、相手に復唱させます。若いときに上司からそうした指導を受ければ、やがて経験を積み、作業員に指示を出す立場になったときにもきっと役立つでしょう。

説明力をアップするには「ワン・ツー・スリー」という手法も有効です。ワンで、これから話すことの端的な意図(見出し)を示し、ツーでその詳細を語り、スリーで再度強調します。

例えば、クレーン搬入に当たってどこから入れてどこに設置するかを確認する場合、「君にクレーン搬入と設置場所を確認してもらいたい」と、まずは趣旨を話し、「クレーンでは○○の材料を○○のために○時から吊り上げる」と作業詳細を伝え、「そのためにクレーンをセットする場所が重要です」と念を押す。「相手が知りたいことを伝える」と意識すれば、自然と説得力も高まるのです。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。