住友建機株式会社SUMITOMO

契約外の「常用作業」は
工費を踏み倒されやすいので要注意!

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重機を使って主に基礎工事をしている専門会社ですが、現場の監督から下請負契約にない作業を頼まれることが多く、それを常用(傭)作業として請求すると拒否されることがあります。「当初の作業範囲に入っているので支払いできない」というのですが、別途作業の工事代金をもらうにはどうしたらいいでしょうか。

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イラスト 佐藤竹右衛門

工事契約には請負と常用があります。請負は事前に定めた作業範囲を遂行したときに代金を受領できる契約で、労務費から材料費、運搬費、機械費などすべて込みの金額が一般的です。

対して常用は、一定の仕事を決められた時間で実施して代金を受け取る契約。1人の作業員が1日働く労働量を1人工(にんく)として計算します。材料や運搬費などは発注元が負担することが一般的で、費やした労務費相当をもらえます。

ご相談をいただいた方は、基礎工事の専門会社ということですから、仕事は基本的に元請からの下請負契約でしょう。請負の場合、作業範囲や品質状況などを検査合格した記録をもって請負が成立したと考えます。しかし、現実的には作業範囲を明確にできないようなことが起こるのが現場の常です。

例えば、穴を掘ってヒューム管を埋める作業があって、作業工程の中に掘削して土を搬出することと書かれていなかった場合、これは常用作業として別途工事になります。バックホウを使って掘削し、ダンプに積み込んで運搬する作業を人工数で計算し、新しい注文書をもらわなければなりません。
ところが、実際の作業現場でその都度注文書をもらうと面倒になりますから、指示を受けたまま作業して、「後で追加支払いをお願いします」という対応で済ませてしまいがちです。

元請の監督が良心的なら「~の追加作業を指示、常用作業として認めた」という伝票を切ってくれるので請求書に添付すれば問題はないのですが、中には「バックホウは請負の中に入っている。だから差っ引け」と、ダンプの運搬費しか支払われなかったり、「施主から別途作業の代金をもらえないから」などと理由をつけて下請に支払わなかったりするケースもあります。

では、対策をどうするべきでしょうか。基本的には下請負契約時にしっかりと作業工程の範囲を明確化することが大事です。その上で、現場で別途作業を指示されたら、その場で複写のメモを取り、相手に1枚渡して「指示内容です。間違いないですね」と別途依頼された事実を残しておくといいでしょう。相手にサインをもらえると一番いいのですが、サインをしたがらないこともあるので、その点も記録しておきます。

また、下請負契約に「追加、変更に伴う増減金は協議して決める」という契約条項が通常記載されています。ここを話し合うことです。
さらに特約条件を付けて、「現場状況が変化して作業を中断した場合、3日目以降は1日当たり××円を補償ください」と記載すると、交渉も有利になるでしょう。

近年、公共工事では「設計変更ガイドライン」が浸透し、また建設業法における元下の対等性を順守する動きが盛んになっています。いずれにしても面倒くさがらずメモを残すことで、対等な協議をすることです。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。