住友建機株式会社SUMITOMO

事故やトラブルを防ぐには、
「前兆」の見極めが必須!

Q

「現場トラブル解決術」を毎回、参考にしています。読んでいるうちに建設現場のトラブルには前兆があるのではないか、それを見極めて対処すればトラブルが予防できるのではないかと思うようになりました。前兆にはどのようなものがありますか。また、それを察知する手がかりがあれば、教えて下さい。

A

トラブルには大きく2つのタイプがあります。まず第1に施工ミス、不具合など工事施工本体が引き起こすもの、第2に工事遂行における人間関係が原因となるものです。施工ミスは科学的、技術的に現象面から判断できます。しかし、人間関係は相手の雰囲気、口調、仕草などから察知しなければならず、経験や勘が必要となります。

第1の施工ミスや不具合は一定の現場経験がある人ならば、作業内容を監視(点検や監督)していると、「あれ! おかしい?」と気づくことがあります。これがトラブルの前兆です。

例えば、運転しているとき、蛇行する車を見れば「おかしい」と誰でも思うでしょう。ここで、想像を働かせて、酒気帯びか、病気かと考えれば、その車から離れたり、場合によっては警察に通報したりといったことが考えられます。こうした兆候を軽視して、蛇行車に近づけば、何らかの事故に巻き込まれるかもしれません。

同じように工事現場でも、普段と違う作業や現象を目撃すれば、それがトラブルの前兆ということになります。これらはカメラからのモニター画像では気づきにくいことがあります。例えば、地山掘削の現場で、クラックが入ったり、湧水や浮石が発生したりすれば、それは土砂崩れの予兆です。それを観察して普段との違いに気づき、事前にネットを張ったり、作業者に注意を促したりすることが大きなトラブルを防ぐのです。

第2の人間関係では、周辺住民や顧客が相手の場合、対話の中から感情や怒りの度合いなどを察知するノウハウが必要です。隣家から「家の境界に入り込んでるぞ」とクレームを付けられた場合、「そんなことはないはずです。よく見て下さい」などと無愛想な対応をすると、相手をますます怒らせてしまいます。

例えば、倉庫を引き渡した後、顧客から「空調の効きが悪いな」と言われたとき、相手の言い方や仕草から怒っているのか、困っているのか判断して、それに合った対応をしなければなりません。

「そちらでちょっと様子を見て下さい」などといい加減な対応をすると、相手をより怒らせることになるので、まずは的確に質問して迅速な点検を行いましょう。どの空調が不調で、温度設定とのギャップはどのくらいか、あるいは倉庫に何を保管しているのかを確認します。

調べた結果、空調の問題ではなく、吹出口の荷物が邪魔していることもあります。その場合は循環用扇風機を取り付けるなどの対応を行います。

どんな小さなクレームでもおざなりにせず、ちゃんと聞いて対応する誠意が大切です。トラブルを大きくしないためには、「弁解しない」「相手の気持ちを尊重する」「自分の思い込みをなくす」「できないことはできないと明確にする」という4つのポイントを心がけましょう。


構成=吉村克己 イラスト=佐藤竹右衛門

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。