住友建機株式会社SUMITOMO

騒音・振動調査は必ず「記録」。
万が一の訴訟に備えよ!

Q

民家が近接している場所で工事することになりました。
ある程度の騒音・振動が発生するので、事前に家屋への影響調査をしたいのですが、その際どんなことを心掛ければいいのでしょうか。
拒否された場合の対応の仕方も知りたいです。今回の施工地域では、以前、騒音で苦情があったと聞いています。

A

騒音・振動の影響に関する家屋調査で拒否された事例を私も知っています。そのときは工場の基礎づくりのための擁壁設置に当たり、地盤を重機で掘削する工事だったと聞いています。

道路を隔てて立ち並ぶ民家に対して事前に家屋調査をお願いするわけですが、基本は塀や外壁などの外観調査です。振動で亀裂が入ったかどうか、後で確認するためです。

古い木造家屋などでは家屋内の柱や壁なども調べることがあります。内部調査は特に拒否されることが多いのですが、この時は1軒だけ外観調査も断った家があったそうです。理由を聞くと「最近の地震ですでにハウスメーカーが調査済みだからもういい」というのです。できれば、それでも「念のため調べさせてください」とお願いするほうがいいでしょう。

実際に外観調査を拒否した民家が工事後に苦情を申し立てるケースもあり、調査しておかないと対応が難しくなります。調査できないまでも、いつ挨拶に行き、どのような内容の説明をして、結果的に拒否されたと、記録だけは残すことが大事です。

実際に工事の振動で壁に亀裂が入ったかどうか因果関係を調べることは簡単ではありません。もし、地震による亀裂ならば他の民家も影響を受けているので調べれば分かりますが、「振動による因果関係はない」と証明するのも難しい。裁判にまで持ち込むケースは少ないでしょうが、いずれにしても調査経緯の記録だけは残しましょう。

騒音の影響を住民に説明する際も気をつけなければなりません。一番やってはいけないことはダイレクトに質問することです。例えば、「夜間工事は実施して構いませんか」とか「病人はいますか」などです。答えたくないという住民もいます。

もう少しやわらかい言い方で、「振動や騒音で影響を受けられる方がいらっしゃれば、工事の時間帯などを配慮いたしますが……」と問いかければ、「午後は幼児を昼寝させる」あるいは「月・水・金の15時からピアノ教室を開いている」などの情報を得ることができます。

また、実際の重機の掘削音を録音して聞かせたり、「振動が発生してもコップの水がこぼれることはありません」などと、具体的に説明したりすることも大切です。あくまでも住民を気遣うという姿勢を持つことです。

一般的な騒音レベルは60デシベルまでが普通の街なかの音で、70デシベルを超えると「うるさい」と感じます。それが走行中の電車内の音や救急車のサイレン音です。90デシベルになるとカラオケ音レベルで、他人には耐えられないうるささ。

こうした目安を示して、掘削音が何デシベルになるか説明するとわかりやすいし、実際に発生した騒音がどの程度なのか、記録しておくべきでしょう。万が一訴訟になったときの証拠になります。もちろん、防音マットなど、できる対策は手を抜かずに行いましょう。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。