住友建機株式会社SUMITOMO

外国人労働者とは積極的に「雑談」を。
それが「事故」や「すれ違い」を防ぐ近道

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土木工事を請け負う会社の工事責任者をしています。下請け会社の作業者に外国人労働者が増えてきました。現場の労災事故も多いと聞きます。労災を防ぐためにどのような対策があるかお教えください。

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イラスト 佐藤竹右衛門

外国人技能実習生の労災事故統計を見ると、2014年度から16年度の労災死者数は10万人当たり3.7人にのぼっています。日本人は同1.7人ですから、外国人技能実習生が労災に遭遇するケースが多いことがわかります。実際に労災の起きた現場を検証してみると、次のような要因が目立ちます。

①日本の施工・作業方法に不慣れ
②日本語で意思疎通ができない
③自分の仕事のことしか頭に入っていない

日本で外国人技能実習生を受け入れる際には、現地の送り出し機関が実技訓練をしています。しかし、自国とは作業環境が大きく異なるので、戸惑ってしまうことが少なくありません。

たとえば、日本では現場でヘルメットをかぶるのが常識ですが、海外ではかぶらないケースも多いですし、足場にしても、日本の法令では許可されないような木製のものも使われています。一般的に安全意識が低いので、さまざまな安全ルールが定められた日本の現場に慣れるには時間がかかるのです。

また、日常会話には問題がないことが多いので、日本語は十分通じていると考えてしまいがちですが、現場の用語には慣れていないことも少なくありません。そのため、作業手順などが通じていないケースがあります。
職長が最後に「わかったか!」と聞けば、外国人労働者は、たとえ理解できていないことでも、「はい!」と答えざるを得ません。こうしたコミュニケーション不足で、事故につながってしまうケースがあるのです。

仕事に対する向き合い方も、日本人と外国人労働者では大きく異なります。日本人は自分の仕事が終わったら、周囲の状況などを見て「自分はここから離れたほうが、ほかの作業の邪魔にならないな」などと察します。しかし、外国人労働者のなかには、「自分の仕事が終わったらその場で休んでいていい」と考え、重機が入ってくる場所に留まってケガをすることもあるのです。
以上を前提に考えると、事故を減らすには、作業現場で次のようなことを実行するといいでしょう。

一つ目は日本語の理解度の確認です。現場の会話や看板(標識)が理解できているか、新規入場の際に現場基本用語や看板(立入禁止、作業通路など)がわかるか質問してみることです。不十分な場合は、入場を見合わせ、危険な作業をさせない指示書を与えるべきでしょう。

二つ目は作業ルールなどを示したポスターなどはイラストを利用し、一目でわかるようにすることです。さらに現場を一緒に回って、危険な場所などを確認しておくといいでしょう。

三つ目は、日本的なチームワークに触れさせること。安全に作業をするにはコミュニケーションが欠かせません。現場でピリピリして緊張感を与え、特別な目で外国人労働者を見るのではなく、休憩時間に日本語で「君の国ではこれはどうやっているの?」などと質問してみるなど、積極的に雑談するのが効果的です。それを繰り返すうちに徐々に心が打ち解けてコミュニケーションがとれるようになっていきます。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。