住友建機株式会社SUMITOMO

施主の不満を明確にするには
「オウム返し」が効果的

Q

コンクリート打ち放しの施工で型枠の解体後のことです。施主から「出来映えがよくないから、やり直してほしい」との要求がありました。「自分のイメージと違うから」というのが理由です。具体的な指摘であれば対応ができますが、「イメージ」と言われると困ってしまいます。どうすればいいでしょうか。

A

イラスト 佐藤竹右衛門

建物外壁の仕上げは、施主の大切な注目点です。不満の声が出た場合には、何が気に入らないのかを探り、納得してもらうための説明が必要になります。

まずは施主の言葉から、不満の種類がどのようなものかを判断しましょう。施主が「うーん」と考え込んだあと、具体的な不満が出てきた場合、自分のイメージと照らし合わせている様子がうかがえます。この場合は、頭の中に描いていた完成形との食い違いが原因といえます。

一方で、「何だ! こんな仕上げは話と違うじゃないか」と感情的な反応であった場合には、直感的な不満であることが多いものです。例えばコンクリート面の色ムラや気泡、砂筋のような粗雑さが目立っていることなどが考えられます。

ご質問のケースは、前者に当てはまると考えられますので、イメージとの食い違いに絞って対応をアドバイスします。
最初の対応として「イメージが今一つということでしょうか」と、質問をオウム返ししてみます。すると「そうだ、最初見たサンプルの仕上げはもっと白っぽかったはずだ。グレーが暗すぎる」などと、具体的にどうイメージと違うのかを指摘してくれます。最初に「イメージとどのように違うのですか?」と問いかけると、施主は「反論された」と思ってしまい、感情的に強く出てきます。“オウム返し”は、柔らかく相手に言わせる効果があるのです。

次に、相手が気になっている色ムラやグレーの濃さについて、「なぜそうなったのか」と、理由を論理的に説明することが重要です。「それは大丈夫ですよ、見慣れたら気になりませんよ」といった裏付けの乏しい回答では、不信感が増してしまいます。そこで次のような回答が考えられます。
「色ムラはコンクリート表面の乾き具合の差です。多少型枠の表面のアクが付着しているところもありますが、表面を磨きますので目立たなくなります。そして色の濃さは水分が蒸発すると、白っぽくなっていきます」
これなら、施主の納得が得られるでしょう。

もう一つ、大事なことは視点を変えることです。施工の裏話や施工の注目点、大切にしたことをさりげなく伝えましょう。「このコンクリート打ち放しの木コンの位置は、型枠の継ぎ目とバランスを取っています。型枠の工夫は今回、最も注意を払って施工した部分です」
こんな説明があれば施主も満足度が高まり、心が落ち着くのではないでしょうか。
施主から不満が出ると「そこまでおっしゃるなら、予算の範囲内でやり直します」とつい言ってしまうことがありますが、これでは施主に自信のなさが伝わり、かえって信頼を失いますから、絶対に避けてください。

なお、コンクリート打ち放しの施主の気になる質問や不具合例、トラブル例を事前に調べてどんな不満にも答えられる虎の巻を作っておくとよいでしょう。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。