朝礼は日本の企業に伝わる伝統的な行事として建設業界では、古くから多くの企業が実施している。
しかし、内容がマンネリ化して、十分に生かされていないケースが多いのも事実。
朝礼を効果的に活用するにはどうすればいいのか、そのテクニックを紹介する。
社員を変える! 「朝礼」の極意
職場に一体感が生まれ
生産性が上がる5つの効果
建設業界では多くの企業が朝礼を実施しているが、業務連絡や服装チェックなどが中心となっているケースが多いのではないだろうか。しかし、朝礼にはさまざまな効果が期待できる。業務開始前のわずかな時間だが、それをいかに活用するかで業績アップにもつながる。朝礼がマンネリ化していると感じているのであれば、一度やり方を見直してみてはどうだろうか。
飲みにケーションに代わる効果がある
実際にどんな効果が期待できるのか、主なものを挙げると5つとなる。1つ目は社員同士が互いをよく知るきっかけとなり、社内のコミュニケーションが深まる効果だ。日本では「飲みにケーション」という言葉が生まれるほど、仕事が終わってから仲間で酒を酌み交わし、コミュニケーションを深める習慣があった。
しかし、最近は酒を好まない若者が増え、飲み会も減っている。また、働き方改革を進めるには、業務時間外の行事を強く勧めるわけにもいかない。結果的に以前よりも互いを知る機会が少なくなり、コミュニケーションがうまくいかなくなっている。とくにベテランと若手の間には、ジェネレーションギャップが大きく、コミュニケーションが希薄になることで業務にも影響が出始めている。
36年の歴史を持つ朝礼専門誌『月刊朝礼』の梶谷友美編集長はこう指摘する。
「朝礼で互いを理解するきっかけを作れば、飲みにケーションにまさる効果が期待できます」
社員の道徳心を養いトラブル防止に役立つ
2つ目は社員教育の場にできることだ。朝礼で仕事に役立つことや話題になっていることを紹介することで、社員間で共有できる。たとえば、自分が感動した偉大な経営者の言葉などを引用して、社員のモチベーションを上げることもできるし、夏の季節であれば、熱中症に関する知識を紹介することで体調を崩しにくくすることも可能だ。道徳心を養うこともできる。
最近は、飲食店の店員が不適切な動画をネットにアップして問題になっている。バイトテロとも呼ばれるこの行動は、「何をしてはいけないのか」の判断基準を誤っている人が増えているのが原因だろう。
「それを防ごうとすると、ルールを厳しくすることになります。まじめに仕事をしている多くの社員まで窮屈になり、生産性が下がる可能性があります」
一朝一夕には改善できないが、毎日の朝礼で道徳に関する話題を共有し、積み重ねていくことで社内に連帯感が生まれ、会社や他の社員に迷惑をかけるような行動は慎むようになるという。
「さまざまな環境で育ち、価値観の違った人が会社には集まってきますから“これは普通しないだろう”という感覚が通用しません。朝礼で互いを知ることでモラルアップにつながります」
3つ目は社員の体調を直に確認できることだ。建設現場では、少しの気の緩みが大事故につながる可能性がある。朝礼で集まった社員の顔色や表情を見れば、「体調が悪いのではないか」「悩みごとがあるのではないか」とある程度の判断ができるものだ。そんな社員がいれば、経営者や上司は声をかけることが大事になる。
実際に労働災害で死亡事故が発生する確率は建設業が最も多くなっている。とくに多いのは「墜落・転落」「交通事故」「はさまれ・巻き込まれ」などだ。これらの事故を起こさないためのチェックポイントを朝礼で確認するのもいい。
4つ目は会社の目標やチームの目標を共有することだ。朝礼ではその日の仕事に関する業務連絡が優先されがちだが、会社が何を目指しているのか、長期的なビジョンが理解できていなければモチベーションも上がらない。自分ががんばれば、会社の目標が達成できて、自分の夢も実現できるという道筋が描けてこそ、生産性の向上が期待できる。
5つ目は、仕事を始める前に社員が一堂に会することで、仕事モードに切り替えやすくなること。体操を実施している会社も多いだろうが、体を動かしたり、朝礼で発言することで仕事スイッチが入り、効率よく仕事を始めることができる。実際に、事故を防ぐことにもつながる。
効果を最大限に引き出す「朝礼」実施のポイント
朝礼の効果を最大限引き出すにはどんなことを実践すればいいのだろうか。そのポイントを紹介しよう。
多くの企業の朝礼では経営者や上司が中心となって、その日の業務に関する伝達事項を話しているだろうが、それだけでは効果は限られてしまう。参加している社員はどうしても受け身になってしまい、「早く終わらないか」と考えてしまうからだ。重要な連絡事項を聞き落としてしまう可能性もある。
社員に仕事以外のことをスピーチしてもらう
それを改善するには、社員にも積極的に朝礼に参加してもらう必要がある。一つは社員自身に朝礼で話をしてもらうこと。その内容は、自分が普段感じていることや趣味の話など、何でも構わない。
「大事なのは仕事とは関係のない話をしてもらうことです」(梶谷編集長)
たとえばベテランから若手に仕事の指導をする場合でも、相手がどんな考え方をするかを理解していなければ、正しい伝達はできない。それは仕事上の会話だけではなかなかわからないものだ。朝礼で若手が家族の話をして、生まれたばかりの子どもがいるとわかれば、自分が子育てしたときの失敗談などを会話に挟むことで、互いの距離が縮まり、技能の伝承も円滑に進む可能性がある。
朝礼で社員に話をしてもらうことは、コミュニケーション力を高めることにもつながる。営業職であれば、日ごろから多くの人と接するため、自然と会話力も身についていくが、技術職にはそのような機会は得にくい。技術力を磨くことがもちろん重要だが、自分の意見を堂々と説明できる会話力もときには必要になる。たとえば、現場で元請け会社の社員から進行状況の説明を求められたときに、しどろもどろでは信頼を失いかねない。朝礼で発言することが訓練につながる。
朝礼の場で前日の失敗を取り上げて社員を叱咤激励するケースも多いが、ダメ出しは気を付けたほうがいい。指摘された社員は気分が落ち込むし、反発心も生まれてしまう。建設現場ではちょっとした失敗が大事故につながる可能性があるため、厳しくしなければならない場面もあるが、失敗した社員には個別に、その失敗がどんな事故につながる可能性があるのかなどを、冷静に説明すればいい。朝礼の場では、社員が前向きに仕事をスタートできるように気を配る必要がある。
明日から使える!朝礼の話材
朝礼の「効果」と「ポイント」がわかっても、何を話せばいいのか?と迷う方もいるだろう。ここでは、朝礼の話材となるテーマを紹介する。
コミュニケーション編
「返報性の原理」で相手の心をつかむ
自分はコミュニケーション能力が低いと感じている人も多いでしょう。しかし、コミュニケーションも技術の一つですから、訓練を重ねていくことで習得ができます。コミュニケーションでまず大事なことは相手に関心を持つことです。相手のことを知りたいという興味があれば、自然と会話が生まれます。相手にしても自分に興味を持ってくれる人には信頼や好感を持つものです。
行動経済学に「返報性の原理」と呼ばれるものがあります。人から何かをしてもらうと、自分もお返しをしたくなる心理状態のことです。身近な例で言えばバレンタインデーのお返しをホワイトデーにするようなものです。仲良くなりたい相手にはまず、自分から何かをしてあげることも有効ではないでしょうか。
第一印象は見た目で決まる
私たちはユニフォームで仕事をすることが多いので、服装に気を使わないことが多いのですが、同じユニフォームでも汚れていないか、ヨレヨレになっていないかなど、気配りをすることは重要です。アメリカの心理学者、メラビアンという人の研究では、初めて会ったときの印象は3~5秒で決まると言われています。そのときの判断材料は目からの情報が55%、耳からの情報が38%、話をした内容などが7%だそうです。
以前「人は見た目が9割」というタイトルの新書がベストセラーになりましたが、それはちょっと大げさにしても、見た目が最も大事であることは確かなようです。だからこそ身だしなみを整えることは重要なのです。第一印象は、その後の人間関係にも大きな影響を与えます。清潔感のある服装を心がけてください。
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥
仕事をしていると自分の知らないことに出合うケースがあります。言葉がわからない、やり方がわからないなどさまざまですが、そのときに「こんなことを聞いたら笑われるのではないか」と、知っているふりをしてしまうことがあります。これは絶対にいけません。相手はあなたが理解しているものと判断してしまうからです。昔から「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」と言います。わからないことや知らないことを尋ねて馬鹿にされたとしても、それは一時の恥ですむ。しかし、聞かなければ一生、恥ずかしい思いをしなければならない、という意味です。
とくに現場では、知らないまま仕事を進めてしまうと、事故につながることもあります。知らないこと、わからないことに遭遇したら、上司や同僚に聞くなどしてその場で解決してください。
話が続かないときは「オウム返し」
初対面の人とはなかなか会話が続かないことがあります。そんな場合の簡単な対処法として「オウム返し」があります。オウムが人の言葉をマネるように、相手の言葉をそのまま繰り返す方法です。たとえば、相手が「今日は渋滞に巻き込まれて、現場に来るのがいつもより30分も余計に時間がかかった」と言ったとすれば、「渋滞で30分も余計にかかったんですね」と返します。とてもシンプルではありますが、オウム返しをすることで会話が続きやすくなります。相手の話に合わせて相槌を打つのも効果的ですが、オウム返しのほうがより話を積極的に聞いている印象になります。
オウム返しはクレームを言ってきた相手にも効果的です。オウム返しによって共感している印象を与えますので、相手の気持ちを落ち着かせます。
クレームを出すときは礼儀正しく
取引先が決められた日時に資材を納品してくれない場合など、クレームを入れなければならないこともあります。しかし一歩間違うと、後々の取引にまで影響を引きずることになるので注意してください。クレームを出すときには、まず感情的にならないこと。日ごろの鬱憤(うっぷん)を晴らすように居丈高になってしまったり、相手を非難したりすると、互いの関係を悪化させますし、解決が遠くなってしまいます。
逆に自分も失敗をした経験があると、言うべきことを言えないことがあります。それも問題です。何に困っているのか、状況を正確に伝え、迅速な対応を求めなければなりません。クレームを出す場合には、礼儀正しくかつ言うべきことを正確に伝えることを心掛けてください。
モチベーション編
成功したければ気を抜くな
仕事で成功を掴むためにはどうすればいいか。最も大事なのは気を抜かないことだと思っています。有名な写真家の土門拳氏は、写真撮影で大切なことは何かと聞かれて「レンズのキャップを外すことです」と答えたそうです。どういう意味でしょう。私たちも仕事をする際にキャップを外さずにシャッターを押すようなことをしていないか、ということです。当たり前のことをつい忘れてしまいます。
たとえば、現場の整理整頓もせずに早く仕事を進めることばかり考えてしまうことはないでしょうか。現場が雑然としていると、ミスが起きやすく効率が悪くなります。仕事がうまくいかないときは、この言葉を思い出してください。
雑用を完璧にこなせば自信がつく
仕事にはさまざまなものがあります。面倒で手間のかかる雑用のようなものも少なくありません。特に新人のうちは、重要な仕事ではないと思うと手を抜く人もいます。
しかし、雑用に見える仕事の中にも重要なものがたくさんあります。みなさんが上司の立場になったとして、雑用だからと手を抜く部下に大きな仕事を任せたくなるでしょうか。小さな仕事を完璧にできない人は大きな仕事もできないのです。どんな仕事にも全力で取り組むことが、自分に自信をつけ、上司や同僚から信頼されることにつながります。
自分らしさを出すには「守破離」が有効
子どものころに剣道を習っていた人もいるのではないかと思いますが、剣道や茶道の修業の段階を示す言葉に「守破離」があります。「守」は、師や自分が入門した流派の教えを守り型や技を身につける段階です。「破」は、他の師や流派の教えにも触れて、よいと思うものは取り入れる段階です。そして「離」は、学んだ師や流派から離れ、自分自身で新しいものを生み出す段階です。
これを仕事に置き換えると、新人の間は上司や先輩から教えてもらったことを忠実に守ります。疑問を感じても基礎を固めることに専念するのです。基礎をマスターしてから、他の方法を試したり、自分なりの工夫をしたりするほうが、独自性を出しやすいのです。
ゴールから逆算すれば目標は達成しやすくなる
日ごろ、仕事に追われていると、10年先、20年先の将来のことなど、考える時間がありません。しかし、早い段階で生涯設計を立てておくことは重要です。何歳までにどんなスキルを身につけ、資格を取得し、将来はこんな仕事をしたい──。そうした目標が明確になっていれば、ゴールから逆算して計画が立てやすくなります。
逆に目標が明確でないと、仕事以外の時間を無駄に過ごしてしまいがちです。そしてみなさんの目標をぜひ他の人とも共有してください。
実は、自分の目標を周囲に宣言するのは効果的だと言われています。後に引けなくなりますし、周囲の応援も得られるからです。「若いときにがんばっておけばよかった」と後悔しないためにも、今日からでも始めてください。
訓練すれば記憶力はよくなる
自分は記憶力が悪い──。そう思ってあきらめている人も多いと思います。それは生まれながら記憶力が悪いのではなく、コツを知らないだけかもしれません。どうすれば、記憶しやすくなるのか。一つの方法は復習です。ドイツの心理学者にエビングハウスという人がいましたが、彼は人が記憶したことをどう忘れていくかを研究しました。それによると、20分後には42%忘れ1日後には66%忘れてしまうそうです。
つまり、記憶したいことは、その日のうちに復習をすると忘れにくくなります。その後も週間以内、1カ月以内……と復習を繰り返していくと、頭の中にしっかり記憶され忘れにくくなります。何かを覚えなければならないとき、この話を思い出してください。
安全確保編
常に家族や同僚の顔を思い浮かべる
私たちの仕事は、ちょっとした気の緩みが大きな事故につながってしまうことがあります。ときには命さえ危険になってしまいますから、安全確保には十分に気配りをしてください。厚生労働省のデータによると、2018年に労災で亡くなった人は909人でした。業種別に見ると、建設業が最も多く309人です。一方、どんな事故で亡くなった人が多いのかを見ると、墜落・転落が最も多く256人、交通事故175人、はさまれ・巻き込まれ113人と続いています(上の図表「労働災害発生状況」を参照)。
忙しく仕事をしていると、集中しすぎて周囲が見えなくなってしまうことがあります。しかし、ひとたび事故になれば、みなさんの家族が悲しみ、場合によっては生活が立ち行かなくなってしまうかもしれません。あるいは、同僚にも迷惑がかかってしまうことがあります。常に家族の顔や同僚の顔を思い出して安全を心がけてください。
ヒヤリハットは事故の前兆と考える
みなさんも仕事中にヒヤリハットを経験したことがあるかもしれません。ミスによってヒヤリとしたり、突発的なことにハッとしたりすることです。大きな事故につながりかねない一歩手前の状態です。労働災害ではハインリッヒの法則がよく知られています。
1件の重大な事故には件の軽微な事故が隠れており、さらに背後には300件のヒヤリハットがあるというものです。この法則からわかる教訓は、大事故を防ぐためには小さなミスによるヒヤリハットが起きないように日ごろから注意が必要であることです。仕事の中でヒヤリハットがあった場合には、必ずその内容を上司に報告してください。どうすれば繰り返さないかを一緒に考えてくれるでしょう。これはみなさんの家族のためであり、会社のためでもあるのです。
「騒音性難聴」が事故につながる
私たちの現場は作業中に大きな音が出ることもあります。それは避けることができないのですが、大きな音を聞き続けることで発症する「騒音性難聴」があります。周囲の音が聞こえにくくなってしまうと警告音などに気づかず事故につながってしまう可能性があります。音楽を楽しめないなど、日常生活にも支障が出ます。難聴になる前には耳鳴りが生じることが多いようです。
いったん難聴になってしまうと回復が難しいので予防が大切です。大きな音が続く現場では耳栓などを利用してください。最近は騒音をカットしながら、会話をしやすくする耳栓も登場しています。みなさんも情報収集を心がけてください。
仕事に関するSNS投稿は控える
最近はインスタグラムやツイッターで情報発信をしている人も多いと思います。それは決して悪いことではありませんが、仕事とは線引きをすることが大切です。レストランの従業員が来店した芸能人を暴露したり、コンビニの店員が不適切な動画を投稿したりして問題になっています。本人はちょっとした悪ふざけのつもりだったかもしれませんが、一度、投稿して拡散されてしまえば、削除できません。たった一度の不注意な行動でお客様や取引先の信頼を失ってしまうのです。店員の不適切動画によって1000万円を超える被害を受けた飲食店もあると言われています。投稿した本人も自分の失敗を一生背負っていくことにもなりかねません。投稿する前に、もう一度冷静になって判断してください。
得意な仕事こそ事故が起こりやすい
みなさんのおかげで大きな事故もなく、順調に仕事が進んでいます。しかし、「安に居て危を思う」と古くから言われています。平安な状況が続いていても常に万が一の場合を想定して備えをしておかなければならないという意味です。
私たちの仕事は常に危険と隣り合わせですから、日ごろから気を引き締めて取り組みたいところです。とはいえ、何か特別なことをする必要はありません。通常通りの安全確認をしていれば、大きな事故を防ぐことができます。
自分の苦手なことは注意深く行うので、失敗はしにくいといえます。一方で得意なことや好きなことをしているときにミスが起こりがちです。得意な仕事をするときこそ、気を引き締めていきましょう。
健康管理編
睡眠負債は寝だめしても解消できない
睡眠不足は健康に大きな影響を及ぼすだけでなく、事故につながる可能性があります。睡眠障害で事故を起こし逮捕者が出たこともあります。報道によると、加害者は運送業の男性で軽貨物車の運転中に居眠りで男性会社員をはね全治6カ月の重傷を負わせたそうです。この男性は2014年以降、少なくとも件の事故を起こし、3回の免許停止処分を受けていました。睡眠障害になると、眠気やだるさがあり、集中力が低下します。また、急に眠気に襲われ、一瞬、意識が飛ぶことさえあると言われています。
睡眠不足は「がん」「糖尿病」「心臓病」と関係があるともいわれています。睡眠不足がじわじわと蓄積していて睡眠負債となってしまうと、週末に寝だめをしても解消できません。睡眠負債を溜めないように、日ごろから十分な睡眠時間を確保してください。
めまいやたちくらみは熱中症の初期症状
私たちの仕事は外で作業をすることが多いので健康管理は重要です。暑いときはとくに熱中症に注意しなければなりません。厚生労働省のデータによると、10年以上前の2009年には熱中症による死傷者は150人でした。しかし年には1178人まで増えています。年で約8倍に増加しているのです。とくに建設業が多く直近5年間で見ると、毎年死傷者数がトップになっています。
熱中症のピークは7月、8月ですが、9月以降にも死傷者が出ています。気を緩めることなく、暑い日には対策を講じてください。最も大事なのは水分の補給です。軽い脱水状態ではのどが渇かないこともありますので、渇いた感じがしなくても定期的に水などを飲んでください。熱中症の初期症状には、めまいやたちくらみ、筋肉痛などが知られています。少しでも症状が出たら休憩して体を冷やし、水分と塩分を補給するようにしてください。
イライラしたら腹式呼吸で落ち着く
仕事が思うように進まなかったり、人間関係がうまくいかなかったりして、イライラしてしまうことがあります。そんなときにぜひ実践してほしいのが腹式呼吸です。日ごろ、呼吸を意識することはないでしょうが、大きく分けると胸式呼吸と腹式呼吸があります。簡単に言えば、息を吸ったときに胸が膨らむのは胸式呼吸、お腹が膨らむのは腹式呼吸です。腹式呼吸は自律神経を整えたり、筋肉の緊張を緩めたりする効果があるそうです。
つまり、リラックスできるのです。緊張した状態が続いてストレスが溜まって来たなと感じたら、お腹を意識しながら息を吸い込んでゆっくり吐いてみましょう。ちなみに呼吸法を利用したダイエットも話題になっていますから、メタボが気になっている人は調べてみるのもいいと思いますよ。
深酒は認知症やうつの原因にもなる
酒は古くから「百薬の長」と言われ、適度な飲酒は健康にもよいとされています。しかし、長い間大量の飲酒を続けると、体に悪い影響を及ぼします。「俺は酒に強い」などと豪語していると、取り返しがつかないことにもなりかねませんから注意してください。大人が1日に飲んで悪影響のない酒の量は100%の純アルコールで20グラムと言われています。日本酒に換算すると約1合です。
また、週に2日の休肝日を入れることが大切だと言われています。酒の飲みすぎと深く関係しているのがメタボです。内臓に脂肪が溜まるのが原因ですが、脳梗塞や心筋梗塞などの原因にもなります。さらに、認知症やうつ、自殺の原因にもつながると言われています。深酒は家族にも心配を掛けますし、仲間にも迷惑をかける可能性があります。お互いに声を掛け合って飲みすぎないように注意しましょう。
病気になっても悲観しないことが大事
パナソニックの創業者である松下幸之助氏は若いころから病弱だったため、健康には気を配り社員にも心身の健康の大切さを常に説いていました。ただ、どんなに気を付けても、病気になってしまうことがあります。そんなときには、どんな心の持ち方をすればよいかについて次のように言っています。「不安であっても病から逃げてはいけない。病を恐れて遠ざけていれば、病はあとから追いかけてくる。病を味わい、病と仲よくすれば、しまいには病のほうから卒業証書をくれるものである」
彼は若いときに肺尖部が炎症を起こす肺尖カタルに罹りましたが、仕事を休んでしまえば生活ができなくなってしまいます。そこで病気になったのも運命だと受け入れて仕事を続けながら養生したのです。病気に罹ったらすぐに治療をすることは大事ですが、病は気からとも言いますから、必要以上に悲観しないことも治療のひとつだと思います。
参考文献
『安全衛生読みたい話、伝えたい話│朝礼、ミーティングにも活用できる50話─』中央労働災害防止協会編、中央労働災害防止協会
『朝礼の話材280例』二木紘三著、日本実業出版社
『元気が出る朝礼話のネタ帳』本郷陽二著、アニモ出版
『新入社員が学ぶ建設現場の災害防止(改訂第2版)』建設労務安全研究会編、労働新聞社
社員が元気になる『月刊の朝礼』の朝礼
36年間『月刊朝礼』を発行してきたコミニケ出版では、実際にどんな朝礼を実践しているのかを紹介しよう。
司会はくじ引きで決めて社員の参加意識を高める
同社では朝礼にゲーム性を持たせ楽しく参加できるように司会は毎朝、くじ引きで決めている。司会は最近のニュースについて発表する役目もあるため、いつ当たるかわからない状態にすることで常にニュースをリサーチするようになる。
朝礼の冒頭では日本の伝統文化を重んじるため神棚に拝礼、また、会社を創業し礎を築いてくれた創業者の写真にも一礼する。
その後はともに働く仲間とのコミュニケーションを図るために握手、あいさつ用語などを唱和する。次に『月刊朝礼』の本文を司会が読む。同誌には1カ月分の話題が日付ごとに掲載されている。司会がその内容を朗読し、感想を社員が発表する。これが朝礼の大きな目的のひとつだ。同じテーマについて話をしても、人によって感じ方は違う。これにより、その社員の人となりを知ることができる。
「1分間という決められた時間の中で自分の意見を発表することでプレゼン能力も高まります」(梶谷編集長)
その後は社是や経営理念などを唱和した後、司会が最近のニュースを発表する。最新の情報にアンテナを張り、社会人として知っておくべき知識を養うためだ。「今日もわが社はツイてるツイてる」を唱和し、プラス思考で1日をスタートできる工夫もしている。充実した内容が詰め込まれた朝礼だが、所要時間は30分弱。朝礼をもっと活用したいと考えるのであれば、何かひとつでも取り入れてみてはどうだろうか。
イラスト=佐藤竹右衛門 文=向山勇