住友建機株式会社SUMITOMO

相次ぐ原価アップに、元請もお手上げ!?
タッグを組んで、施主に交渉を!

Q

コロナ禍や世界情勢の不安定化によって、鋼材・木材・ガソリンなどの資材値上げが続き、調達遅れや品不足の不安が消えません。値上げぶんの価格変更を元請にお願いしても断られることがあり、困っています。
当社は土木主体の工事会社で、一部小規模建築や改修も手がけているのですが、何か有効な対策はありますか。

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イラスト 佐藤竹右衛門

資材の原価上昇により利益確保がままならない。調達も難しくなって工期遅れが避けられず、困っている……。そんな声が日増しに高まっています。

ある自治体が、市の建設工事受注者を対象に今年5~6月に行ったアンケート調査では、資材価格高騰の「影響が出ている」との回答が9割を超えました。実際、資材価格の平均上昇率は約2割にも達します。

工事請負契約には、物価の変動に伴う契約変更を認める物価スライド条項が盛り込まれていることが一般的です。この自治体では、契約変更(つまり値上げ)を「請求している(あるいは予定)」と回答した受注者が45%、「請求しない」が36%となりました。

建設業界では、見積書に社会保険など法定福利費の内訳を明示することになっています。国土交通省でも見積書や受注書に内訳が記載され、適正な請負代金が下請に対して支払われているかを確認しています。例えば東北地方整備局では今年度の活動方針として、下請取引状況や価格転嫁などを重点的に確認することにしています。不当に低い請負代金での契約は建設業法に違反する恐れがあるからです。

したがって、行政が施主となる公共工事では、政府が設計価格見直しを促していることもあり、元請も下請もスライド条項による値上げを要請しやすくなっています。下請としてはまず、建設物価上昇のグラフ、主要資材の1年前と今の上昇率一覧をまとめ、以前の見積りからどのくらい原価が高騰しているか明確にして元請に提出します。さらに国交省からの価格見直しの通達文を添付すると効果的です。

一方で問題は民間工事です。ビル賃料などが伸び悩む中で、施主がスライド条項を拒否するケースや、そもそもそういった条項が契約に含まれていないケースも数多くあります。

下請が元請に対して、先に述べたようなデータを提示しても話が進展しない場合は、代替材料、仕様変更、規模縮小など値上がりコストを吸収するための話し合いを元請と行い、施主に提案することです。

例えばウクライナ侵攻に伴い、ロシア政府がカラマツの単板を輸出禁止としたため、業界ではスギ材を使った合板に仕様変更する動きが強まっています。元請も同様に困っているので、そうした提案をすれば受け入れられるかもしれません。

また、鉄骨をコンクリート構造に置き換えたり、路盤材として可能なら改良土にしたり、化粧仕上げ材を塗装に変えるなど両者が知恵を出し合い、施主を巻き込まない限り、資材高騰問題の打開は困難でしょう。

元請との協議がうまくいかない場合は、行政の協力を得るという手もあります。国交省では建設業フォローアップ相談ダイヤルという窓口を設置しており、資機材価格高騰などによる価格転嫁の相談を受け付けています。また、国交省の中に仲裁機関もあり、感情的になる前に話し合う機会もつくれます。ぜひ参考にしてみてください。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。