住友建機株式会社SUMITOMO

「オンライン立ち会い」が日常化。
課題や意見をどう伝える?

Q

コロナ禍やデジタル化に伴い、「オンライン立ち会い」や「電子書類提出」などが増えています。そのため現場の状況が発注者に伝わりにくく、認識にギャップができることもあります。安全管理対策など、現場からの提案や工法変更を認めてもらえないこともしばしば。今後もオンライン化が進むと思われますが、どのように対応するべきでしょうか。

A

公共工事では発注者側の監督員が施工現場に立ち会って、土砂や石などの状況を判断し、工事を請け負った施工者と話し合いながら斜面の掘削方法などを決め、危険であると判断すれば追加工事や安全対策を施すことが当たり前に行われてきました。

ところが、コロナ禍やデジタル化の進展によって、モニター越しに監督員がオンラインで立ち会うケース(遠隔臨場)が増えています。そのため現場側と監督員側の体感の違いから、重要度の認識に差が出て困るという話を、私も以前から聞いていました。

現場ではスマートフォンのカメラなどを使って掘削予定の場所や周囲の状況を映し出して説明するわけですが、映像と音声だけで土砂崩れの危険度を判断することは難しいのです。本来は目で見て土砂を触り、浮石や水みずみち道の状況、雨水の流れ、斜面のひび割れなどを確認して総合的に判断するべきでしょう。ベテランならば過去の経験と照らし合わせて危険度を判定できるかもしれません。

現場ではそうした判断のもと、安全対策を求めても発注者側では危機感が薄いので追加予算を認めないということが起こるわけです。また、大きな会社では、現場所長と本社側の工事部長の間で同様の問題が発生する可能性があります。公共工事でも民間工事でも、効率化や予算削減ばかり考えていると大きな事故につながりかねません。

それではどうすればいいか。本来は現場調査に戻していくべきですが、おそらく今後もオンライン化が進むでしょう。

そこで、現場側の説明方法に一工夫が必要です。淡々と説明するのではなく、感情を込めて、感嘆符の付いた話し方をしてみてください。
「土留めは現状、簡易になっていますが、もし大雨が降るとリスクが高まります」ではなく、「見てください! この斜面の土を。この土壌は水を含むと崩れやすい! もし崩落したら大変なことになりますよ! 下には道路が通っているのだから!」といった感じで、テレビアナウンサーが台風現場で実況中継するように、臨場感たっぷりに伝えるのです。ちょっとした演技力もいるかもしれませんが、伝わり方がまったく違います。

例えば、自動車の教習所などで事故の映像を見ることがあると思いますが、実際に目の前で事故が起きたら、その体感度も恐怖度もまったく異なります。聞く相手が体感できるように状況を描写できれば、それだけ印象が強まります。もし、現場から小石が崩落しているなら、その様子を動画で撮影しておきましょう。雨が降ったときの土壌の変化なども記録しておくといいですね。それらを発注者に見せるのも一つの手でしょう。

一方、施工が完了した部分の報告を行う出来形検査や品質検査では、臨場感の演出は不要です。感嘆符付きの説明をするには、リハーサルを事前にしておいた方がいいでしょう。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。