インターンシップで学生が実習に来ますが、「現場でいじめられた」とレポートに書かれたことがあります。現場での学生の行動を見ていて、気になることがあったときは、本人のためを思って厳しく指導していました。それが“いじめ”と受け止められてしまったようです。インターンシップでの指導はどこまでにしたらいいのでしょうか。
インターンシップの学生はお客様。
厳しい指導はマイナスになりかねない
Q
A
イラスト 佐藤竹右衛門
インターンシップを受け入れると、発注者側はそれをプラス評価して加点しています。そのため、受け入れに積極的な企業が増えてきました。インターンシップは建設業をよく理解してもらう機会でもあり、新人を育てるくらいの気持ちで指導することもあるでしょう。ご相談のケースは、それが裏目に出たのだと思われます。
現場には、さまざまな危険があります。それなのに何かおちゃらけていたり、ハラハラするような学生がいることは事実です。本人の安全のために指導しなくてはいけない場面が少なからずあります。
そのとき、指導する側が十分に認識しておくべきは、「学生は社会のことを知らない」ということです。友人や家族、先生と接触した経験しかありません。過保護に育てられてもきました。だから、注意したつもりでも叱責と受け止められてしまいがちです。
新人警官が指導役の巡査部長を射った、先般のショッキングな事件は記憶されている方もいることと思います。叱責されて腹が立った、というのが動機でした。「怒鳴られた」という報道もありました。あの新人の行動はあまりにも過激ですが、今の若い人たちがどれだけ叱られることに慣れていないか、あらためて思い知る事件でした。
現場では怒鳴るなんてことは日常茶飯事です。しかし、インターンシップの学生は現場を体験しに来ているだけですから、「こいつを一人前にしてやろう」という気持ちにはならないことです。むしろ、お客様だと思って接したほうがいい。入社後の指導ではないことを肝に銘じてください。
むしろ、私は「おい、何やってんだ!」と注意しなければならない状況に置いたこと、それが間違いだと思います。危険な作業をさせることはありません。安全な場所で、作業の合間にクイズを出すようにしてはいかがでしょうか。
「ゴーヘイと言ってるだろ。どういう意味か分かるか」「分かりません」「そのまま行けと言ってるんだ。英語のGoAheadの略なんだよ」
このように現場で使う用語や、道具などについて質問し、考えさせて現場への興味を持たせていくのです。
その日に何をやり、何を感じたか日記を書いてもらっている企業があります。そこに「いいところに気づいたね。君は着眼点がいいよ」といった励ましのコメントを入れ、学校には「この子はこんなことに協力してくれ、こんなことに興味を持った。将来こんな能力を発揮しそうだ」と、前向きな報告書を提出し、学校から高く評価されています。ぜひ参考になさってください。
解説
中村秀樹(なかむら・ひでき)
ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。