住友建機株式会社SUMITOMO

隣家からの過剰な要求。
施主へ対応を求めるのは
誠実に説得を尽くしてから

Q

大きな屋敷の隣地にRC造り4階建てのアパートを建築中、「窓から覗かれることがないようにしてほしい」と屋敷の住人から言われました。要求に沿って目隠し対策をするとコスト高になります。そのため、施主は「法的には何の問題もないのだからやらなくていい」と、要求に応じようとしません。このような板ばさみ状態を打開するにはどう対応したらいいのでしょうか。

A

イラスト 佐藤竹右衛門

施工者には、施主の意向に沿って仕事をする請負義務があります。その一方で、近隣住民に迷惑をかけないよう対策を講じることも施工者の義務です。ただ、このケースは騒音や粉じんなど施工中のことではなく、アパート完成後のことを問われている点に難しさがあります。

4階建てということですから、アパート全体に目隠し対策を講じればかなりの高コストとなるでしょう。「建築基準法と民法に準じているのだから必要ない」。そう施主が主張するのは無理からぬところです。

隣家の目隠し要求は過剰反応という観もあります。とはいえ、覗かれたくないという気持ちを無視したままでは工事が円滑に進みません。
施主が直接隣家の住人と話し合えばよさそうなものですが、なかなかやってもらえないのが現実ですし、当事者同士では感情的になってしまい、かえって話がこじれる恐れもあります。ここはまず施工者がていねいな説明に努めることです。

類似例を調べて、社会通念上はこのアパートへの目隠し要求が過剰なものであることを理解してもらいます。ただしその前提として、覗かれたくないという心情に寄り添って話を聞くことを忘れてはなりません。「不安に思う気持ちを汲んでくれている」と感じさせることが重要で、法的には不要なのだという主張が前面に出てしまうとマイナスです。

不安を和らげるためには、現在の設計でもさほど覗かれる心配がないのであれば、そのことをわかってもらいましょう。あるいは、隣人の要求とは別の安価な方法を考えてみます。隣人がどうしても気になるというところだけ目隠し施工する。すりガラスにするなり、格子を付けるといった方法が何かあるはずです。それを提案し、妥協してもらうのです。

それでも同意が得られないようなら、これまでの経緯を施主に報告し、判断を仰ぎましょう。「それだけの努力をしてくれたのに要求を取り下げてもらえないのなら仕方がないね」と言ってくれるかもしれません。
施主には、施工条件等契約時に不明なことが後で判明したとき、協議して変更や追加の対策を決める義務があります。近隣トラブルの中には、施工者だけで解決するのは明らかに無理だと考えられるケースがあり、施主自ら動いてもらうことも必要です。

しかし、いきなり施主に泣きつくのではうまくいかないでしょう。施主がヘソを曲げてますます態度がかたくなになる恐れがありますし、近隣対策ができない業者という悪評が広まってしまう懸念すらあります。トラブル解決に向けて精いっぱいの努力をすること。要は、誠心誠意対応することです。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。