住友建機株式会社SUMITOMO

「現場の効率化」のため、
トップが率先してIT活用を!

Q

建築現場ではスマホやタブレットなどIT機器を活用して業務を効率化するケースが増えています。
当社もさっそく導入したところ若手社員はすぐに使いこなしているのですが、ベテランが積極的に取り組まず、せっかくスマホを全員に配っても活用できません。ベテランを巻き込むにはどうしたらいいでしょうか。

A

現在、建設現場の業務効率化や勤怠管理などにスマホやタブレットが当たり前のように使われるようになり、市販のソフトもたくさん出ています。

従来は図面をコピーし、関係スタッフ全員に配布してから、それを見ながら会議や電話で話し合うスタイルでした。この場合、図面に修正が入ったらコピーし直さなければならず、手間がかかっていました。

ところがIT機器を使えば修正図面を瞬時に共有でき、何度も1カ所に集まって話し合う必要もありません。勤怠管理もスマホを通じて行い、業務効率化の効果は大きく、大手・中堅建設会社はすでにほとんどが導入しています。

一方、IT化に戸惑っているのは地場にある30~40人規模の中小企業です。若手はすぐに対応できますが、ベテラン社員がなかなか馴染めず、仕事が停滞したり、社員間のコミュニケーションが分断されたりといった問題が出てきました。

情報共有がうまくできないとコミュニケーションも思うように取れず、トラブルやミスの原因になります。若手があきれて辞めてしまうというケースもあります。

何より下請の場合、親会社と図面などの情報のやり取りがうまくいかなくなり、受注にも影響が出てくる可能性さえあります。IT化は時代の流れであり、中小企業も社員全員にスマホやタブレットを配布して取り組まなければなりません。

それには、リスキリング(技術の再習得)が必要です。若手もベテランも、全員が同じIT機器とアプリを学び、成功例を共有するのです。「2人に1台」などとケチらず、機器は全員に配布しましょう。

そして、社長自身が率先して取り組み、社内の若手を選抜してプロジェクトチームを結成、ベテランに聞き取り調査をして使い勝手を改善していくことです。こんなに役立つと社員に見せて納得してもらうことが大事で、一気に進めようとせず、ベテランの誰かを対象にして試し、その後に全社展開することをお勧めします。

ベテラン自身がITを使うことが楽しくなるように工夫し、自分たちの豊富なノウハウをアプリに置き換えていけばやりがいも感じるでしょう。

成功している会社では、ベテランの仕事のやり方をうまくかたちにし、その成果を残すように努めています。例えば、山本さんというベテランの手法を活かして全社ルールにしたら、「山さん方式」などと名付けて敬意を示す手もあります。

残業が減って、業務が効率化し、模範的モデル企業になると自治体も取り上げるし、表彰制度もあります。地域ナンバーワンになるつもりで取り組んではどうでしょうか。

IT導入には行政の補助金もあるし、またリスキリングも今後、補助金の対象になる方向で進んでいます。積極的に支援制度を利用しましょう。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。