会社は「報酬」を支払い、その対価として社員は「労働力」を提供するのが、一般的に理解されている雇用関係である。しかし、これはあくまで会社と社員の関係について一側面を説明しているにすぎない。
社員は生身の人間であり、その行動動機には、給与以外に、やりがい、責任、向上心、地位といった目に見えない「心」に関わる要素が潜む。社員が会社の方針に共感し、働き甲斐を感じていれば、「心」が満たされている状態といえる。当然、そうした社員が離職する可能性は低い。
心理学の博士号を持つ、株式会社Assatte代表の宗澤岳史氏は、経営者が社員の「心」をいかに満たすかが愛社精神を育む上でキーになると解説する。「雇用に問題を抱えている会社は、社員の心をぞんざいに扱い、信頼関係を築けていないケースが多々見受けられます。報酬と労働力の交換だけで成り立っている関係だと、社員は給与が下がった場合、仕事へのモチベーションが激減します。さらに、いま勤めている会社より給与が高い会社に転職してしまいかねません。もちろん物質的なサポートは必要ですが、会社サイドが普段からいかに社員を精神面で支えられているかが、社員を会社に留めさせる決め手となるのです」













