「日本流」の押し付けはNG。
相手へのリスペクトが、外国人材の心を開く

Q

技能実習制度に基づき、現場で外国人材に働いてもらっていますが、コミュニケーションがうまく取れずに困っています。十分に手順やルールを理解してもらえず、万が一事故でも起こってはと心配です。外国人の方と意思疎通を図るよいアプローチの仕方があれば教えてください。

A

日本で働く外国人労働者は、大きく「外国人技術者」と「外国人技能実習生」に分けられます。前者は専門知識を持つ高度人材であり、在留資格の更新で長期滞在が可能です。一方、建設現場の多くを支えている後者の「技能実習生」は、日本で学んだ技術を母国に還元することが就労の目的。在留期間は最長5年で、日本の労働関係法令が適用され、雇用先としっかり契約を結んで働いています。

彼ら実習生たちは、「母国の家族に仕送りをしたい」「帰国後に起業して店を持ちたい」といった切実な目標と希望を胸に日本へやってきます。まずはこの前提を深く理解することが、彼らと良好な関係を築く第一歩です。

コミュニケーションの最初は、彼らのバックボーンに興味を持つことから始めましょう。「子どもの頃はどんな場所で暮らしていたの?」「お母さんの得意料理は何?」など、相手への関心とリスペクトを持って尋ねてみてください。自分の国に興味を持ってもらえたり、褒められたりして嫌な気分になる人はいません。「君の国は自然が豊かでうらやましいよ」と声をかければ、実習生の表情は和らぎ、親近感を抱いてくれるはずです。

そうして相互理解が芽生えてから、仕事上の安全注意や手順を教えていきます。このとき、日本のルールを頭ごなしに押し付けるのは禁物。「細かいルールが多くて、実は俺も好きじゃないんだけどね」「でも、工事を止めないためにこれだけは守ってほしいんだ」「国に元気で戻るためにも、安全は大切だよね」と、雑談を交えながら、親しい雰囲気で伝えることがコツです。「これは日本の特別なルールだけど、守らないと工事を続けることも安全を守ることもできないんだ」と、本人が納得するまで丁寧に教えましょう。

指導の際は、現場で「○○するな!」と怒鳴りつけるのはNG。怒声は人の心には届きません。本人が真面目に取り組んでいるのであれば、多少のミスや失敗には目くじらを立てない度量も大切です。

もし、危険を伴うなどの理由でつい厳しく言ってしまった場合は、後で「安全にかかわることだから、キツく言ってしまってごめんな」と必ずフォローを入れてください。

さらに一歩踏み込んで、実習生の母国語で簡単な言葉を勉強し、日常の中で使ってみるのも効果的です。ほかにも、「日本の仲間に、君の国のことを教えてあげてよ」と頼んでみるのもいいでしょう。

絶えず相手を思いやり、こうした日々の工夫を重ねることが、チームで作業することへの安心感につながります。

相手へのリスペクトさえ忘れなければ、国や文化の違いを気にする必要はありません。まずは彼らを明るい気持ちにさせ、心を開いてもらうこと。それが、現場のルールを浸透させ、安全で生産性の高いチームをつくる最大の近道です。


構成=吉村克己 イラスト=丸山哲弘

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。