「合意形成」なき施工は危険!
施主の“主観”を読み解き、明示化せよ

Q

施主との認識の違いが、トラブルにつながるケースは少なくありません。先日も、「コンクリートの仕上がりがよくないのでやり直してほしい」と施主から指摘を受け、トラブルになりました。できる限り施主の要望に応えているつもりでも、評価は主観的な部分が大きく、対応に悩むことがあります。トラブルを防ぐために、有効な対策はあるのでしょうか。

A

コンクリートの見た目から、クレームに発展することは少なくありません。これらは法的な「主観的瑕疵」に該当する可能性が高い事案です。たとえ施主の不満が主観的なものであっても、事前の合意形成が不十分であれば工事会社の「契約不適合」とみなされるリスクがあります。

例えば、コンクリートの表面が汚い、型枠のつなぎ目が目立つなど、事業者から見れば許容範囲内であっても、施主が欠陥と見なせば手直しを求められる可能性があるのです。

事例として、施主から「ロビーを明るいイメージにしてほしい」要望があり明るく仕上げたつもりでも、完成後「イメージと違うからやり直してくれ」と言われたとしましょう。このケースでは、事前に施主の「明るい」という主観を確認しておかなかったことに落ち度があると言えます。

それならば、コンクリートの仕上がりや明るさのイメージ画像を見せておけばよかったのかと言えば、それでは不十分です。なぜなら、イメージと、実際にできあがったときの感じ方にはギャップがあるからです。施工済みの類似建物を見てもらうことが、一つの防止策になります。

研究所施設の施工を請け負ったある工事会社では、部屋を「最大限明るくしてほしい」という要望を受けました。当初、設計上は1300ルクスと設定しましたが、それを工事会社は「過剰ではないか」と考え、明るさを確認してもらうため、3種類の体感部屋をつくったそうです。標準より少し明るい800ルクスのほか、900ルクス、そして1100ルクスの部屋を体感チェックしてもらった結果、施主は1100ルクスで満足。設計よりも200ルクス落とすことになりました。「最大限」という曖昧な主観について、実際に明るさを体感してもらうことで合意できた好例でしょう。

あわせて内装クロスの出来栄えも、トラブルになりがちな要素です。工事会社が事前の打ち合わせで「継ぎ目も見えず、しわも全くできません」と大げさに言ってしまったために、仕上がり後に「事前の説明と違う」とやり直しになった事例もあります。過剰なアピールは避け、誠実な説明をして施主の確認を取っておけば、このような問題は防げます。

加えて、現場の設計者や施工者は、営業から施主のこだわりの強さなどを、あらかじめ聞き取っておくことも必要。中には主観的瑕疵を理由に減額を求められたり、裁判を起こされたりする例もあります。施工者がどれだけ事前に合意形成の努力をしたか記録に残し、「ここまで施主の主観を確認している」という事実を裁判で提示できれば、施工者の有利になるはずです。

まとめると、施主が何にこだわり、どこを気にしているのかを丁寧に聞き取ることが重要です。そのうえで、「どこまで対応できるか」ということを事前に明示しておく必要があります。こうした合意形成こそが、後々のトラブルを防ぐための鉄則といえるでしょう。


構成=吉村克己 イラスト=丸山哲弘

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。