住友建機株式会社SUMITOMO

【vol.141】
大手をマネても成功しない!
建設業界の成功方程式を大公開!!
強い会社をつくる 「女性活躍」経営とは?

安倍政権の成長戦略に位置付けられた「女性の活躍推進」。中小の取り組みはまだこれからだが、いますぐ準備しなければ企業の存続さえ危うくなるという。その理由とは何か、いかに取り組めばよいのかを紹介しよう。

ついに建設業大手で新卒リケジョが奪い合いに!

日本政府が目指す管理職の30%が女性の社会

女性活躍を推進しなければ経営にデメリットが生じるステージに

 人材不足が深刻になる中、建設業界でも「女性活躍の推進」が大きな課題となっている。女性活躍推進のコンサルティングを手掛けるCHANCEforONEの清水レナ氏は「建設業界ではすでに理系の女子学生は奪い合いの状況」と指摘する。「女性活躍の推進」への取り組みはいまに始まったことではない。これまでも繰り返し行われてきた。最初は1970年代。当時は人権保護や差別撤廃を主な目的として、女性の活躍が社会の多様化につながることが期待された。2度目は2000年代だ。大企業を中心に攻めの経営戦略として、女性のアイデアを活用することでマーケットを拡大しようと、内閣府の男女共同参画推進本部が「2020年までに女性の管理職(指導的地位)を30%にする」と定めた。
「目標を設定したのが2003年で、当時の女性管理職の比率は約9・2%でした。それが2012年になっても約11.1%にしかならなかったのです」
 約10年が経過してもほとんど効果が上がっていなかったわけだ。その間に日本は少子高齢化が進み、人手不足が深刻になっていった。

10年後には元請けの責任者が女性に。
そのとき仕事を確保できるかが課題

待たれる女性リーダー&現場責任者の登用

 そこで安倍政権は2013年1月、成長戦略に「女性の活躍推進」を盛り込んだ。主な内容は、①女性の就業率を上げる、②女性の定着率を上げる、③管理職に占める女性の割合を増やす、の3つ。とくに企業に求められているのは③の部分だ。
「このときの成長戦略の内容は、70年代から数えて『第三段階の女性採用促進』といえるでしょう。従来の女性採用促進と違うのは、国家の生き残りをかけた取り組みとなっている点です」
 人手不足の中、女性の活躍が実現できなければ日本の経済が破たんしかねない、差し迫った問題になっているわけだ。
 16年4月からは女性活躍推進法によって、企業には取り組みが義務付けられた。具体的には、女性の採用比率や管理職に占める女性の割合などの数値目標を設定し、行動計画を公表しなければならない。
 義務化されたのは社員301人以上の大企業で、300人以下の中小企業は努力目標とされただけだが、悠長に構えているわけにはいかない。
「建設業界でも元請けである大企業がすでに女性の採用を活発化させていますから、10年後、20年後にはプロジェクトリーダーあるいは現場の責任者が女性になる可能性は高くなっています。そのとき、女性活躍推進にまったく取り組んでいない下請け企業に仕事を出したいと思うでしょうか」
 女性の採用は一朝一夕にできるものではない。いますぐ取り組みをはじめなければ、将来、仕事の受注が難しくなる可能性がある。とはいえ、中小企業は人員も資本力も限られる。さらに建設業界は仕事柄、女性を採用しにくいという事情もある。建設業界で本当に女性の活躍は可能なのか、次ページでは素朴な疑問を解決しよう。

建設業界で女性は活躍できる?どんなメリットがある?
素朴な疑問Q&A

Q1.現場の仕事は女性には無理では?

A.オペレーターなど女性向きの職種はある

 建設業界には力仕事が多く女性には難しいと考えている人が多い。
「しかしそれは、単なる思い込みにすぎません。建設業界でも力仕事になるのはごく一部で、それ以外は、女性も問題なく活躍していますよ」(清水さん)
 たしかに機械化が進んだ建設業界で、力が必要になる仕事は多いわけではない。たとえば、建機オペレーターなどは女性でも問題ないだろう。
「鉄筋業界の団体である全国鉄筋工事業協会(全鉄筋)が女性活躍の現状を確認するために調査をしたところ︑全国で約270人の女性技能者が活躍していました﹂
 鉄筋を扱う仕事といえば︑まさに力仕事︒それでも270人の女性技能者が活躍していることに︑業界内部にも驚きが広がったという。
「モノづくりに携わることができる建設業界で働きたいと考えている女性は意外に多いのです」
 海外の建設現場では女性のほうが多いケースもあるほどだという。女性には難しい──。そんな先入観を経営者が捨てることから始めたほうがよさそうだ。

Q2.女性を採用すれば業績は良くなる?

A.「なでしこ銘柄」の例が参考に

 女性の活躍によって会社の業績がよくなるか──。これは難しい問題だが、一つの例としてなでしこ銘柄が参考になる(P9参照)。
 これは経済産業省と東京証券取引所が協力し、女性活躍推進に優れた上場企業を選んで「なでしこ銘柄」として、12年度から公表しているもの。なでしこ銘柄と東証一部上場銘柄の平均とを比較すると、「売上高営業利益率」などで、なでしこ銘柄が優位であることが明らかになっている。株価についても同じ結果が出ている。
 中小企業にも同じことが当てはまるかどうかは明確ではないが、「建設業を目指す女性には意欲の高い人が多い」ので、男性社員よりも活躍してくれる可能性は高いという。

Q3.現場の仕事は朝早いので子育て中の女性には難しい?

A.「社員の工夫」「経営者の理解」次第で解決できる

 たしかに、子どもを保育所に預けて働かなければならない子育て中の女性は、勤務時間が制約されると考えがちだ。しかしそれも、ちょっとした工夫で解決できるケースが多いという。「朝、子どもと一緒に出社して、現場に行く途中で子どもを保育所に預けることで、うまくいっている会社もありますね」
 その会社では、朝会社に集合してから、車で現場に向かう。集合時間が早いため、子どもを保育所に預けることは難しい。それを社長に相談したところ、「子どもを連れていったん出社してから、現場に行く途中で保育所に預ければいいじゃないか」となった。
「職人のおじさんたちが大勢で送っていくので保育所で話題になっているようですよ」
 ときには職人が子どもの面倒を見てくれることもあり、この女性は時短の必要もなく、普通に働いているという。
 最近は小学校などでも、登校時間を指定されることも多くなっている。昔は、朝早く登校して校庭で遊んでいることもできたが、防犯上などの問題から、学校に入っていい時間が限定されているのだ。「出社時間に間に合わない」「時短を取り入れなけば無理」などと最初からあきらめるのではなく、経営者が一緒に解決策を考えることでうまくいくケースは多い。

Q4.中小企業が募集しても応募がこないのでは?

A.むしろ「中小ならではの魅力」を発信すべき

 中小企業には大企業にない魅力が数多くある。それを十分に伝えることができれば、大企業にも負けない採用ができる可能性はある。
「たとえば最近は、転勤を望まない人は増えています。そんな人には、地場密着の中小企業の方が働きやすいでしょう」
 大手の場合、全国、あるいは海外へ転勤になる可能性がある。共働きが普通になったいま、妻が転勤することは容易ではないだろう。その点、地域の仕事を中心に手掛けている中小企業であれば、転勤の必要はない。「経営者に近い」ことも中小企業の魅力といえる。大企業に就職すれば、「社長に会ったのは入社式のときだけ」ということも起こるが、社員が限られる会社であれば、経営者が身近にいる。自分の声が経営者に届きやすいというメリットがあるわけだ。
 任せてもらえる仕事の範囲が広いのも魅力だろう。大企業では下積み期間が長く、管理職になるには年、年かかることも珍しくない。中小企業であれば、若手でもプロジェクトを任されることも多く、それがやりがいにつながる。
 多様な働き方が広がりつつあるいま、中小企業に魅力を感じるケースも少なくなさそうだ。

Q5.女性を採用すれば人手不足の解消になる?

A.人手不足解消だけでなく、さまざまなメリットが期待される

 女性活躍の推進は、多様な人材に活躍してもらえる基礎をつくることにつながる。建設業界でも外国人就労者の受け入れが進んでいるが、言葉の壁や文化の壁など、多くの課題はある。「女性にしても外国人にしても、活躍してもらうためには多様な社員を受け入れる環境が必要です。女性の活躍が進まない会社で外国人に働いてもらうことなど難しいと思いますね」
 女性活躍は労働力の多様化を進めるための一歩ともいえるのだ。
「女性には多様性を受け入れる素地を持っている人が多いので、外国人を受け入れるときにも男性では思いつかないようなアイデアを出してくれることもあるでしょう」

職場環境整備や採用活動はどうすれば?
「女性活躍」で会社を伸ばす5つのステップ

経営者が必要性を理解する

Step1

 女性活躍の推進で成果を出すには、「なぜ取り組む必要があるのか」「どんな効果があるのか」などを経営者自身が正しく理解することが不可欠だ。
「多くの経営者が『女性活躍って女性を大切にすればいいんだよね』と思っています。しかしそれは、女性活躍推進の第一段階です」(清水さん)
 すでに日本社会が「第三段階」に移ったいま、女性に活躍してもらわなければ、人材が確保できなかったり、仕事をとれなかったりする可能性があることを、経営者が実感しなければならない。とはいえ、自分だけで考えてもうまく理解できないことが多い。そこで清水さんが進めるのは、セミナーなどへ積極的に参加する方法だ。国土交通省や自治体などが建設業の女性活躍に関するセミナーを開催しているので、積極的に参加してみるといいだろう。
 

経営者が取り組みを明言する

Step2

  経営者が女性活躍の推進に取り組む重要性を理解できたら、それを社内で明言しよう。朝礼やミーティングなどの機会に「女性活躍の推進に取り組む」ことを社員に伝える。さらに、実際の取り組みをする際には、経営者自身が中心になってかかわる必要がある。
「建設業界でよくあるのは、女性活躍の推進を女性社員任せにしてしまうことです」
 女性団体と横のつながりをつくったり、女性だけのイベントを開催したりすることが多いが、それでは何も進まない。女性が活躍できていない現状を変える取り組みであるにもかかわらず、決定権のない女性に丸投げするのは無理がある。
「例えば、外国人労働者を受け入れるときに、職場の環境をどう整えるか、外国人自身に任せることはありませんよね。それと同じです」
 女性の意見を聞くのはよいが、判断は経営者自身が行う必要がある。

まず1名を採用する

Step3

  初めて女性社員を雇う場合には“、就業規則をどうするか”など形式的な面を心配する経営者も多い。しかし形式にこだわっていると、いつまでたっても採用はできない。
「まずは1名採用することが重要です。実際に働き始めると、受け入れ体制が整っていないので、さまざまな混乱が出てくると思いますが、それを一つひとつ解決していけばいいのです」
 採用活動にあたっては、まだ女性が活躍できる環境が整っていないことを正直に話したほうがいい。
「そのうえで、女性が活躍できる職場を一緒につくり上げてくれる人を採用したい、一緒にがんばってほしいと伝えるのがいいでしょう」
 経営者が真剣に取り組んでいることが伝われば、女性のいない職場であっても採用は可能になるという。すでに女性社員が何人かいる場合には、ステップ4以降を参考にしよう。

女性社員の状況をヒアリングする

Step4

 女性社員が活躍できる環境を整えるためには、決定権を持った経営者自身が直接、ヒアリングを行う必要がある。障壁になりやすいのは勤務時間だ。子育て中の女性であれば、子どもの送り迎えが必要だったり、子どもが病気になって休んだりすることもある。
 女性の社員が増えてくれば、育児休業をどうするかなど、ルールを明確にすることも必要になってくるが、最初から考えてしまうとコストもかかるし、荷が重くなってしまう。まずは採用して起きたことに対して、前述のケースのように個別対応していくほうが早道だという。「経営者が熱心に環境改善に協力している会社では女性もその熱意に応えて一生懸命働いているケースが多いですね」

女性の採用目標を30%に設定する

Step5

 個別対応で女性の活躍できる環境が少しずつ整ってきたら、次のステップとして、女性の採用人数を増やすことを考えたい。社員300人以下の企業では、管理職の30%を女性にする取り組みは現在、努力目標となっているが、大企業では、女性の数がどんどん増えていくはずだ。「中小企業であっても最終的には30%の女性管理職を目指したほうがいいですね」
 それを実現するには、採用の時点で女性の比率を30%にしておく必要がある。それを目標に採用活動を進めていくのがいいだろう。
 この段階までくれば、女性の定着率をどう上げるか、管理職への登用をどうすればいいかなど、新たな課題に取り組む必要がでてくる。

データで見る女性活躍の現状

社員100人未満の建設業も約1200社が取り組んでいる

 経営資源も人材も限られる中小企業が女性の活躍を推進するのは負担が大きい──。そう考えている経営者も多いだろう。しかし、すでに数多くの中小企業が取り組みを始めているのも事実だ。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」では、個別企業の取り組み状況や行動計画などが公表されている。建設業界でも 1600社以上が登録し、社員数が 10人未満と10~100人の中小企業でも約1200 社が取り組んでいる。いますぐ始めなければ取り残される可能性がある。

女性が活躍できる会社は業績がよくなる

 女性活躍の推進は人材確保のためにも重要な取り組みだが、企業業績がよくなる可能性もある。ひとつの指標が「なでしこ銘柄」だ。これは経済産業省と東京証券取引所が毎年公表しているもので、2017 年度は大和ハウス工業や積水ハウスなど43社が選定されている。選定された企業と東証一部上場企業の平均を比較してみると、売上高営業利益率や ROA(総資産利益率)、ROIC(投下資本利益率)などが優位だった。

建設業の女性管理職は他の業種を大きく下回る

 現在の女性管理職の割合は、どのくらいになっているのか。帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2018年)によると、管理職に占める女性の割合は平均7.2%となっている。業界間の差も大きい。不動産業では 13.4%に達しているが建設業では 4.7%にとどまっている。今後の取り組みが期待されるところだ。
 

日本の男女格差指数はG7で最下位

 日本では女性の活躍が遅れているといわれるが、実際にデータにも表れている。男女格差(ジェンダーギャップ)の状況を見ると、日本は世界 110 位となっている。これは政治・経済・教育などにおける男女格差を示す指標で、数値が小さいほど男女格差が大きいことを示す。G7 の中で最下位ということを考えても、取り組みを急ぐ必要がありそうだ。
 

しみず・レナ

株式会社 CHANCE for ONE 代表取締役。女性活躍推進コンサルタント。企業や自治体等に向けた女性活躍推進に関するコンサルティング、研修、トレーニングを提供し、建設業界における取組み実績も多数。著書に『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』(ディスカヴァー 21)。