部下から、「職場でプライベートなことをしつこく聞く同僚がいて困る」という相談を受けました。聞けば、家庭のことや子供の教育問題まで口出しするようになり、最初はあいまいに答えていたものの、「最近ますますひどくなってノイローゼになりそう」とのことです。どのように指導・アドバイスをすればいいでしょうか。
プライベートを聞きまくる「話し好き」。
放置すると人間関係に悪影響が
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イラスト 佐藤竹右衛門
職場にはいろいろな人がいます。話し好きな人にとっては、現場へ移動する車中は格好の「コミュニケーションの場」。そこで標的にされ、嫌気がさす人も少なくないようです。転職の理由の中に「職場の人間関係の悩み」が多いのもうなずけます。
部下から相談されて、「彼に悪気はないから、まじめに対応しないで適当に付き合えばいい」などと、曖昧に答えていませんか? こうした助言は部下の悩みを放置しているだけで、何の解決にもなりません。
部下には、プライベートに踏み込む人には以下の3タイプがいて、それぞれで対処法が異なることを話してみてください。
まず、「自分の関心、楽しみのためにプライベートを詮索するタイプ」です。
このタイプは特定の人、特に新人などをターゲットにして、家族関係などを根掘り葉掘り聞きたがります。質問された側が若手なら、相手に気を遣って丁寧に対応するでしょう。しかしその丁寧さが、ターゲットにされる隙をつくってしまいます。
最も的確な対応は相手にしないこと。話に乗らず、淡白に対応し続けて隙をつくらなければ、やがてあきらめます。
第2が「社内の話題提供者として自分の価値を見出しているタイプ」。
いわゆる社内のおしゃべり屋です。「あの人○○だって」「あの人の家は○○があってすごいみたいよ」と、他の社員のことを言いふらし、自分は何でも知っていると誇示するわけです。行き過ぎた個人情報をしゃべり回るようならば、被害者で結束して本人に是正通告することも選択肢になり得ます。上司や経営者としても、噂話を超える悪質なケースがないか、社内の人間関係を常に注視しておきましょう。
第3は「しつこく何度もプライベートなことを質問してくるタイプ」。
こうした相手にはきっぱりと拒否することが効果的です。「なぜそんなことを聞くのですか。あなたはどうなんですか。仕事に関係のないことには答えられません」と伝えるのです。ひょっとすると相手が怒って「こんな些細なことですぐカッとする」と、陰口を言いふらすかもしれませんが、周囲はその人のことをわかっているはずなので、気にしないようにフォローしましょう。何より、上司や経営者が、そうした噂話に踊らされないことです。
やっかいなのが、部下の悩みの相手が上司の場合です。立場を利用し、度を超えたプライバシーの詮索をしていませんか?そうした会話はパワーハラスメントになります。しつこく酒席に誘うのもNGです。
もしも部下が「上司や経営者に訴えても解決しない」と思ったら、最悪の場合、法的措置をとられることもあります。円満な人間関係は、良質企業の基本。今こそ改めて、社員・スタッフへの接し方に問題がないかチェックしてみましょう。
解説
中村秀樹(なかむら・ひでき)
ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。