住友建機株式会社SUMITOMO

3年以内の早期退職が頻発。
若手の結束強める教育を!

Q

新卒の就職者が、早い段階で辞めてしまいます。しかも、応募者まで減少傾向。かつては5名程度は採用していたのですが、最近は1~2名です。定着率を高めるため教育研修をしたいのですが、中小企業ではそこまで手が回りません。どうすればいいでしょうか。

A

イラスト 佐藤竹右衛門

厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況(平成 29年3月卒業者の状況)」では、高卒就職者の3年以内の離職率が、全産業で約40%に対して、建設業は約46%となっています。

若い人たちは、建設業に対して、「社会に貢献できる」というイメージを持って応募してきます。その理由は、災害時などに、「がんばる建設労働者」を見ているからではないでしょうか。

また、建設業界は人手不足で給料もそこそこいい。そして、身体を動かしてモノをつくる達成感もあります。ところが、いざ入社すると、現場に放り出されて面倒も見てもらえない。そのため、3年以内に約半数が辞めてしまうのです。
私自身も、建設会社における新人教育のお手伝いをしています。そうした経験から申し上げると、中小企業でも、教育に力を入れていて、入社後3年以内の教育が充実している会社は、若手の定着率が高いですね。

そこで今回は、人手不足の中小企業でも実践できる、とっておきの教育方法をご紹介します。これは、私が行っているやり方で、実際に行った会社の定着率は上がっています。
ポイントは、新人を孤立させないこと。採用が少ない企業の場合、「同期がいない」ことも珍しくありません。そこで、3年目までの若手を一緒に教育し、仲間意識を高めてもらうのです。
この教育システムがうまくいけば、先輩が後輩に教え、指導を通じて自らも学ぶ。といった、互いに助け合う関係の構築を期待できます。
今どきの若者は、SNSなどですぐにつながりますから、ある程度放っておいても仲良くなるし、落ちこぼれが出そうなら、上司が支援をすればいい。

実際の教育内容で注意するべきことは、最初の3か月は知識の詰め込みはせず、建設業に興味を持たせることです。そして、宿題を出して自ら考えさせる。現場に配属してもかまいません。現場責任者の協力を得て、現場仕事に関する宿題を出してもいいでしょう。例えば、安全について教えられたこと、気がついたことなどを思いつく限り書き出させます。さらには、作業手順などを、上司や先輩に自発的に質問したり、調べたりする習慣を身につけさせましょう。

半年も経てば、より高度な作業の流れ、品質管理などの宿題を出し、小テストを行う。月に1回程度は、研修生を全員集め、発表やディスカッションを実施、年度末には総合テストを行います。合格すれば初年度は1万円の報奨金を渡します。
すると、お互いがノートを見せあって覚えようとするなど、チームワークが生まれます。
2年目は2万円、3年目は3万円と増額しましょう。その程度の予算なら、研修費として捻出できるはずです。

この仕組みが定着すると、若手社員たちの結束は強まり、定着率が高まります。その結果、応募者も増える“好循環”が生まれるので、試してみてください。

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。