新型コロナの影響で、材料の調達が滞り、県からの公共工事が進まなくなりました。
契約では前払金保証の条項があったにもかかわらず、県の総務課から「代金は工事完成後に支払う」と言われ、すでに調達した材料代の支払いを立て替える羽目になりました。どうしたらいいのでしょうか。
突発的な資金繰り悪化の対応は
政府や自治体の各種補助制度で!
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A
イラスト 佐藤竹右衛門
公共工事では材料の調達費が多額になるため、一般的に前払金保証という制度が使われます。これは工事計画に基づいて必要な材料費の4割程度が事前に支払われる仕組みで、残りは工事完了後に入金されます。
これにより体力のない建設事業者でも立替金を用意することなく、スムーズに工事の準備ができるわけです。保証は前払金保証事業会社を通じて行われます。事業者は保証人も担保も設定不要で、安価な保証料だけで資金を調達できます。
さて、今回のご相談は非常に稀なケースだと思われます。おそらく緊急事態で県側は一時、支払いにストップをかけたのでしょう。それでも予算は計上されているのですから、工事が続く限り、後日支払われることが通常だと思います。
もしも資金繰りに困っているなら、コロナ禍においては政府も金融機関に対して事業者への緊急融資を行うことを通達しているので、メインバンクに相談すべきでしょう。中には前払金保証を当てにして金融機関との取引きがほとんどないという事業者もいるようですが、コロナ禍に限らず近年は大災害など突発的なことも頻繁に起こり得るので、金融機関との日頃の付き合いが必要でしょう。
国土交通省による「地域建設業経営強化融資制度」に基づいた「出来高融資」(工事の出来高に応じた融資)を利用すると、工事請負代金債権の譲渡を条件に、保証人不要で融資を受けられます。
また、政府や地方自治体には緊急助成や補助制度もあるので、活用することをおすすめします。ただし、こうした制度は広く宣伝されていません。自ら積極的に調べて、申請する必要があります。
私がこうした情報収集に使っているのが、中小企業庁によるメールマガジン「e -中小企業ネットマガジン」※です。このメールマガジンは中小企業施策に関する最新情報や、課題に取り組んで成功している中小企業の事例、セミナー・講習会などの情報を週1回配信してくれます。自社と同じような課題に悩む企業事例があれば経営の参考になるでしょう。
公共工事を中心に受注している事業者は、どうしても前払金に頼ってしまい、危機管理に甘くなる傾向があります。運転資金に困っていないからといって、経営者は金融機関との付き合いをおろそかにせず、情報交換を心がけるようにしましょう。行政の助成や支援制度、ビジネス関連の情報なども入手できるかもしれません。
財務内容が優良ならば現在、かなり低金利で融資を受けられるようになっています。数か月間だけの短期融資でも金融機関との関係は深まります。
解説
中村秀樹(なかむら・ひでき)
ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。