住友建機株式会社SUMITOMO

“3アクション”で慢心をいさめ、
作業員の安全意識を変革する!

Q

現場では安全管理に十分に配慮し、作業員の教育も行っているのですが、なかなか意識が高まりません。これまで大きな事故やケガは発生していないのですが、いつ起こるかわからず不安を感じています。作業員たちの慢心や油断をいさめ、安全意識を向上させるためにはどうすればよいか教えてください。

A

建設企業の中には作業員の安全管理に対する意識が乏しく、どうやって向上させるか手をこまねいている経営者も少なくありません。特に職方を雇用して、中小規模の工事を施工している事業者にその傾向が強いようです。長年、労災事故を起こしたことがないといっても、現場では1秒先に何が起こるかわかりません。

洪水など自然災害の脅威にさらされたとき、人はどのように思考し、対処するべきでしょうか。イレギュラーな出来事が起きたとき、大切なのは「気づく」「考える」「行動する」の順番で動くことです。

例えば、大雨予報や異常な土砂降りに遭遇したときに、ハザードマップなどを見て、今の状況が危険だと「気づく」。そして、避難勧告が出る前に逃げるべきなのか、などを「考える」。結果、避難所へのルートをチェックしたり、必需品や貴重品、通信機器などをリュックサックに詰めて「行動する」。

当たり前と思うかもしれませんが、いざとなると慌てたりパニックになったりして、「気づく」「考える」「行動する」の順番で対処することができなくなります。ですから、日頃からイレギュラーな出来事を想定して、訓練しておくことが大切です。

大きな被害を出した東日本大震災では、岩手県釜石市鵜住居地区の小中学生570人がほぼ全員避難に成功。この出来事は「釜石の奇跡」と呼ばれました。なぜ、彼らは無事だったのでしょうか。それは、同市が2004年から防災教育プログラムに注力していたからだといわれています。学校と住民による合同訓練や、消防と連携した負傷者搬送訓練など地域ぐるみで防災に取り組んでいたのです。

「訓練は行っている」と反論する経営者もいるでしょう。しかし現場では作業員に“慢心がある”という前提で考えなければなりません。

例えば、クレーンで荷を吊る際、「突風が吹くかもしれない」と思いつきもしない。これが慢心であり、「考える」ことをストップさせます。その結果、ワイヤーロープを点検するという「行動」にたどり着きません。

吊り荷の落下といった過去の事故の写真を作業前に見せるなど、「気づき」のきっかけを人為的につくってみましょう。AIによって、現場映像から警告音声を発するようなシステムを導入してもいいかもしれません。

また、クレーンの吊り荷をわざと落下させて、いかに慢心や油断が危ないかをわかってもらう体感教育も有効です。関係機関開催の建設安全講習会などに、作業員を参加させてはどうでしょうか。

慢心・油断の一方で、過緊張状態も危険です。重要な作業には、頭脳明晰な状態で作業員が臨めるように、休憩時間などをコントロールするよう指導しましょう。

また、作業員同士の人間関係も重要。お互いに協力し合える良好な関係があってこそ事故は防げるのです。


構成=吉村克己 イラスト=丸山哲弘

解説

中村秀樹(なかむら・ひでき)

ワンダーベル合同会社 建設コンサルティング&教育
名古屋工業大学土木工学科卒業。大手ゼネコンにて高速道路、新幹線の橋梁工事などに従事。
建設マネジメントの実践、建設技術者教育で活躍。