住友建機株式会社SUMITOMO

有限会社つしまエコサービス(長崎県)

島で生きる。 そこから見える
日本と世界の明日。

運送業から創業し、顧客の要望から林業にも事業拡大

 対馬は、九州本土の北130kmの玄界灘に浮かぶ、南北82km東西18kmと細長い形状の、総延長900kmを越える複雑なリアス式海岸線を持つ長崎県に属する島である。ちなみに朝鮮半島へは海峡を挟んで50kmの距離にある。面積は日本第10位の696k㎡、人口は約30,000人、島全域が対馬市の1島1市体制で、その面積の約88%が山林で、耕作に適した平地は少なく、陸上交通も概して不便である。山林の本来の植生は広葉樹林だが、林業の植林による針葉樹林の面積が広がりつつある。

 有限会社つしまエコサービスは、対馬島のほぼ中央、対馬空港の南に所在している。同社の沿革として、平成14年に先代 岸良秀行社長が8Tユニック車1台で、重機や機材の運搬を請け負う運送業を興したのが始まりである。その後、解体工事業や産業廃棄物処理など、顧客の要望に応える形で事業は多方面に着実に拡大されていった。平成18年、熊本の大学でバイオ関係の研究をされていた現社長が、故郷対馬にUターン入社してから同社は大きく変化していく。

 その後、現在までのご活躍を代表取締役 岸良広大氏にお伺いした。

「私が大学の在学中に父が起業したので、運送業という以外仕事のことは何も知りませんでした。仕事を手伝ってほしいと言われ、長男だったこともあり、いつかは親の面倒を見なければならないと思っていましたので、便利な都会生活に未練もありましたが島に帰る決意をしました。入社時の弊社は、父一人が切り盛りする、本人の技術と顧客の信頼で成立しているだけの、会社としての展望も全く見えていない状況でした。単純な肉体を酷使する仕事は、なかなかモチベーションを維持することは困難で、いつか何か充実した仕事がしたいと考えていました。」

離島特有の条件を考慮した業務改善で飛躍的な発展に

 「対馬のような離島では、多くの不便や不平等が存在します。基本的に、多くの生活物資には海上輸送費が上乗せされ、その結果物価が高く車輌用の燃料なども本土よりかなり割高です。ある日父から、飲食系の事業者さんが、てんぷら油の廃棄費用として年間50万円支払っているという話を聞き、大学時代に学んだ知識からバイオディーゼル燃料の精製を着想し、入社3ヶ月後には、再生燃料プラント事業を立ち上げていました。再生油を、軽油の代替燃料として自社の車輌に使うことで、本業にも影響が出始めてきます。今まで、優秀なオペレーターによる丁寧で安全安心な仕事をすることで評価されていた運送事業に安価な燃料費を運送価格に反映させることで、業務が飛躍的な発展をみました。
 林業重機や機材の運搬だけの請負が、木材の運搬も依頼されはじめ、現在の業務比率は材の運搬が60~70%、重機の運搬は30~40%となっています。バイオディーゼル燃料事業は自社分と小学校の給食車用に使用する程度で10%にもなりません。今回念願だった最新鋭機SH135X-7グラップル仕様を新車で導入することができ、高い作業性能と快適さに喜んでいます。」

 「昨年12月に社長に就任し事業を継承しましたが、将来的に地域のニーズにあった形で、柔軟性を持って地域にフィットした仕事がしたいと考えています。ただ、素材運搬の仕事だけでなく、木を切る仕事からの請負を誘っていただくこともありますが、将来的にもその事業に進むつもりはありません。今までお世話になった方たちの競合相手になって、恩を仇で返すようなことはしたくないからです。島の若手の林業従事者が集まって明日の対馬の林業や、島の持つ色々な問題を解消するために定期的な会合も開き意見交換しています。今一番の関心は先日テレビ番組でも取り上げられた対馬への漂着ゴミのことです。海流や風の影響で漂着ゴミの量が対馬は日本で一番多く、環境省から県の予算も支給されていますが、半分も除去できていません。対馬の自然や水産業を守るには漂着するマイクロプラスチックゴミ問題を解決しないと成り立たないと考え、一般社団法人対馬CAPPAを立ち上げ、海岸清掃や発生抑制対策などさまざまな活動をしています。今後も環境対策の事業を計画して何とか対馬の力になりたいと思っています。」

レポート
九州統括部 福岡支店
渡邊 伸二