今回、平成21年に同組合の代表理事組合長の重責に就かれて以来、積極的に高性能林業機械の導入や事業の効率化を推進されてきた、大江一美組合長にお話を伺った。
「まず隠岐島後森林組合の概要からお話ししますと、組合員数は約1,200名、組合職員は25名、そのうち18名が現場技能者です。職員の平均年齢は40歳。その大半が島根県の林業大学校を卒業した優秀なスタッフです。年間の木材生産量は前年度で約7,000㎥。その7,000㎥のうち6,000㎥が皆伐で、面積にすると10~15haになります。
木材の出荷先は島内2,000㎥、島外5,000㎥の割合です。島根県では皆伐から再造林への一貫施業が奨励されており、県内の組合の中で先駆けて施業する体制を作ってきました。平成25年からコンテナ苗生産も開始しています。作業道の整備も進み、密度も高くなってきました。コンスタントに10,000㎥を生産できる体制が確立できたかと考えています。ただ島内の森林のほとんどが個人所有であり、その多くが5ha未満の零細所有者です。
最近では森林の資産価値も低く、相続されても名義変更されていない土地が多々見られ、戦後に植林され、主伐期を迎えた森林を早急に皆伐、再造林したいのですが、所有者の同意を得るのに、なかなか難しいところがあります。高性能林業機械の導入は、木材生産をするにあたり、安全性や施業の効率化に、必要不可欠なことだと考えたからです。
現在組合の所有する機械は、フォワーダ1台、ハーベスタ2台、ザウルス2台、グラップル1台、そして今回住友建機から導入したスイングヤーダの計7台になります。過去にリースでスイングヤーダを使ったことがありますが、当時の機械には不具合が見られ、効率化ではなく現場作業員の負担になってしまい使用を中止した経験がありました。しかし技術は日進月歩で進化していて、導入したスイングヤーダは、非常に使い勝手の良い機械になったと評価しています。
森林組合は、基本的に民間企業ではありません。組合員である山主さんたちのニーズに巾広く応える必要があると思います。個人の負担を減らし、森林を皆伐、再造林し、少しでも多くの利益を出す努力をすることが大切です。そのことを職員に口頭や文書で述べても理解しきれないと思うので、私は職員に『小さな山でいいから自分で山をひとつ買って、自分で植林して育ててみなさい』と言っています。そんなふうに山に正面から向き合い愛着を抱くことで、人に言われなくても、山や森を育てるとはどういうことかが理解できると思っています。その心を持つことが隠岐の未来の森林を守ることに繋がると思います。」