
小田原市は、神奈川県西部に位置し、前に相模湾を眺め、西に箱根に連なる山地を背負っている。四季を通じて温暖な気候に恵まれ、戦国時代は北条氏の城下町として、江戸時代には東海道の重要な宿場町として、現在でも箱根観光の拠点として繁栄してきた西湘地区の中心的な都市である。
今回、西湘地区を代表する林業会社である有限会社西湘造林の佐藤克寿 代表取締役に取材の時間を割いていただくことができたが、インタビュー冒頭から今までにお会いしたことのない人柄や経歴に驚かされてしまった。
「最初林業に就く気持ちはありませんでした。とにかく若い頃から日本中の色々な町で暮らすのが夢だったので、35歳になるまで定職には就かず、日本中を転々としていました。30歳から5年ほど岩手県で暮らしていて、次は九州の熊本あたりに行こうと職探しをしていたのですが、住み込みで働ける口を色々探したけれど全然雇ってもらえず、唯一神奈川県の林業会社が受け入れてくれて勤務することになりました。平成14年のことでした。元々神奈川出身なので望まずに故郷に戻ってしまったのです。まったく林業経験のなかったわたしが、その林業会社も4、5ヶ月働いた時点で訳もわからずに、退社させられて下請負として独立することになりました。それでも親方として技術も未熟で道具も揃っていない状態でがんばって仕事をしていると、出会った多くの人たちから応援していただくようになりました。いろいろな方にも助けられて、2年後の平成16年に法人登記し認定事業体になることができました。その後は社業も順調で、現在では社員も11名になりました。社員の平均年齢は40歳近いです。11名の社員のうち林業経験者は2名だけで、後の9名はまったくの未経験者です。業務の内訳は公共事業や役所の入札などと民間の素材生産が50%づつになります。昨年の素材生産高は約6,000㎥くらいでした。林業機械の導入は10年前、平成21年頃だったと思います。」