住友建機株式会社SUMITOMO

アブクマエコロジー(福島県)

復興・再生 福島の未来を
担う企業を目指して

異業種から林業に参入、数年で事業として成立

 平成4年 アブクマエコロジー有限会社は、福島県の中央を南北に結ぶ、中通りとよばれる地域、県内唯一の福島空港の所在する玉川村に林業とは無関係なビルメンテナンスの会社として創業された。平成30年現在も、同社は、先述した福島空港のビル内清掃や旅客機の内部清掃などのメンテナンス業務に携わり社業を発展させている。
 近隣地域は古くから阿武隈山系のコナラの木をシイタケ原木として全国に出荷していた土地柄であったものの、同社の塩田晃社長は、全く林業に興味がなかったという。同社が、異業種である林業に参入したのは平成17年、大手ストーブ会社からストーブ用の薪を製作依頼されたことがきっかけであった。林業に関心はないものの断れない依頼をこなすため、チェーンソー1台を購入して同社の林業はスタートした。
 もちろん当初は全くの素人仕事で、見よう見真似で薪をチェーンソー1本の手作業で作っていたという。小遣い稼ぎのような手作業の薪作りが数年で年間10万束の生産量になり、立派に事業として成立した裏には、社長をはじめとするフォレスト事業部の社員たちの並々ならぬ努力があったことは、想像に難くない。
 塩田社長は「林業の面白さを感じました。」 全くの素人だった自分が山の仕事を体験し、多くの人達から教えていただき、また技術を自分自身が身を持って経験したことで、林業の重要性・面白さ・奥深さ、等の見識を持てたと想います。異業種出身の社長ならではの感覚が、林業で生かされることになる。

震災の影響が続く中で、森林再生事業の生産性と効率の向上を目指す

 「社員の安全と生活の安定」これを会社の基本原則に据え、高性能林業機械の導入や天気に左右される『日給月給』などをやめ完全な月給制にし、社会保険などの福利厚生も充実させて、社内環境の充実を図ることに腐心した。その結果、社員も増え、事業も発展しすべてが順調に進んできた時に、あの日が訪れた。
 平成23年3月11日、東日本大震災の日。海岸部のような壊滅的な被害はなかったものの、福島第一原子力発電所の事故による放射能の影響は計り知れないものがあった。
 塩田社長は「目先が真っ暗になった。ようやく順調に発展しはじめたフォレスト事業部を解散しようかと2年くらい悩み続けました。」と当時を思い起こすように語られた。「7年あまり経過した現在も、福島県下の林業は、まだその影響から完全に脱却したとは言い難い。依然として風評被害等の深刻な問題が残っており、弊社の薪事業も新潟から放射能の影響がない木を買ってきて薪に加工し事業を継続している状況です。
 原子力発電所の事故後、一時途絶えた素材生産も森林再生事業の実施と共に県有林や民有林の森林整備事業が盛んに行われるようになっています。
 弊社では以前よりSH75X-3+KESLA20SHを使用していたが、人力で造材していた時から比べれば遥かに生産性は上がり、それまでの生産量3,000㎥から7,000㎥へと飛躍した。森林再生事業の受注が増加する中で、新しい機械の導入を検討した時も迷わずSH135X-7+KESLA25SHmkⅡを導入する事にしました。今後更に生産量・効率共に向上させていく必要があると考えています。その為にも、住友建機における林業機の開発にはより一層期待したい。」
「林業は、3K仕事と呼ばれ、収入も低く、その担い手の高齢化や後継者の不足がいわれています。ただ、日本という国を想う時、誰かがこの仕事をしなければならないと思っています。殉教者として犠牲になるのではなく、林業の従事者が安全に、安心した生活を送れるような環境整備をすること、そして福島の林業が今後10年、20年、更に次世代へと繋げられる基盤作りに努めていきたいと思っています。」

●レポート 郡山支店 藁谷 義浩