住友建機株式会社SUMITOMO

宮崎森林発電所(宮崎県)

バイオマス発電所
日本一を目指して

鶏糞を燃料にした発電事業が成功

 株式会社宮崎森林発電所は、略称FIT、再生可能エネルギー固定価格買取制度に則った売電用途のバイオマス発電所を建設するために平成25年に設立された。
 発電所は、今年の3月に竣工し、4月から発電プラントを稼働している。未利用材を熱源として5,700KWの発電能力があり、32円/1KWで20年間の長期契約を九州電力と締結している。
 「発電事業は商売として楽です。」発電所の山下社長は、そう話された。「商売で一番労力を使うのは『売る』ことと『売上の回収』です。発電事業はその必要がありません。
 FITで20年間は買い取り先も、金額も決まっているから営業経費を考えなくてすみます。その点は本当に楽です。あとは、燃料になる未利用材をいかに安く手に入れるか、また、いかに効率的に回収してチップ化するか、そのことだけを考えればよいのですから。」あまり楽だとも思えない事業を簡単に楽だと言い切る山下社長の言葉の裏には、隣接する『宮崎バイオマスリサイクル』という日本一の鶏糞発電所の成功が、その下地となっていると思える。
 また、この会社にはもう一つの日本一がある。高校時代、空手団体戦で大将として日本一になり、今は総務部で社長を支える姪の鍋島美智了さんの存在だ。
 山下社長は、昭和57年に鶏糞の産廃処理などを扱う(有)山下商事という会社を設立された。社長はもともと農家の出身で、現在も30haの路地野菜と年産100万羽の養鶏場を経営しておられる。平成11年家畜の排泄物の適正処理に関する法律が成立し、それに対応するために鶏糞を燃料として発電し、売電することを考案された。発電所の完成まで多くの困難、紆余曲折があったが、平成17年から稼働し、現在では毎日400tの鶏糞が持ち込まれ、それを熱源として11,200KWの電力を発電している。もちろんこれは宮崎県が日本で二番目に鶏の生産量が多いという地域の特性に基づいてこそ可能なことといえる。

仕事は、仲良く楽しく

 前述の(有)山下商事は、今回の森林発電所の開所を見据えて、数年前から林業に業務を拡張している。原木の調達や山の買い入れ等、発電所の円滑な運営のサポートをしている。どちらの発電所も従来産業廃棄物として有料で処分していたものを、逆に有償で買い取って燃料にするという価値の逆転が大量の原料の確保を可能にしている。
 今回社長が最初に語られたのは「他の発電所と集積の方法が違います。材を現地に自社で取りに行って、そこでチップ化して持って帰る方法をとっています。」という言葉だった。そのために自社で3台の移動式チップ機を持っておられる。また、今回導入いただいたSH120-5MG6台のうち3台を現場での集積作業に、3台を発電所でのハンドリング作業に使っていただいている。
 社長のお話はいつも論理的で、多くの数字が含まれている。それは多くの実験データや膨大な資料を解析した結果導かれた答えであると感じた。つまり最初に語られた言葉にも『集積に関して色々な方法を試しデータを蓄積して比較検討したけれど、この方法が一番効率的だった。』という意味が含まれていることがわかった。
 社長は最後に語られた。「山を買って伐採するだけじゃなく、植林もはじめています。事業を長い目で見ると、そういう仕事をすることが自然かなと思うようになりました。自分の目先だけの利潤を追求するだけじゃだめだと、会社のみんなが、あるいは地域の人がみんな仲良く楽しく仕事して、稼いだお金を分けましょう。と思うわけです。」

●レポート 宮崎支店 伊藤 雅文