
富山県南砺市は、県の南西部に位置し、砺波平野南部と世界遺産に登録された合掌造り集落のある五箇山を中心とした山間地で構成されている。また西に石川県金沢市、南は岐阜県飛騨市と隣接する県境の町でもある。その南砺市の中でも株式会社島田木材が所在する井波地区は、古くから五箇山から切り出された木材の集積地として栄えてきた。
そして今日まで続く「木彫刻のまち井波」としての繁栄は、江戸時代中期に焼失した古刹、真宗井波別院を再建するため京都本願寺から派遣された御用彫刻士が、彫刻技術を地元大工に伝えたことに始まる。
創業以来70余年、今も「ものづくりの町」の歴史を紡ぐ匠たちに、良材を届け支え続けてきた株式会社島田木材の島田 優平代表取締役社長にお話しを伺った。
「私は、富山県において従来通りの林業を営んでいてはその先の発展は難しいのではと思っています。数字でみても、素材生産量は県全体で10万㎥程度、これは全国で44~45番目です。山の地形は起伏が激しく、大規模な林業には適していませんし、樹種も杉などの針葉樹林の比率は50%以下です。以前アメリカの森林を見学に行きましたが、あの広い国土で、多くの山が皆伐され、信じられない量の素材生産がなされているのを目の当たりにしました。
富山のような林業不利地で素材生産や生産性を追い求めるやり方では、他地域や他社と比べてしまうと勝負にならないと思いました。また、この地域は豪雪地帯で一年のうち半年の期間しか山に入れません。父祖の時代は、林業は危険だが高収入を得られる季節雇用の業種でした。木材単価が高い時代はそれで良かったかもしれませんが、今の時代に即しているとは思えません」