2024年1月、代表取締役に就任した三觜勇社長へ、
短中期的な商況の見通しと2025年度の抱負について聞いた。
2024年1月、代表取締役に就任した三觜勇社長へ、
短中期的な商況の見通しと2025年度の抱負について聞いた。
常に成長志向を抱いて邁進しています。住友建機販売に関しては、経営統合などを行うことなく自助努力だけで成長を続けており、マーケットシェアは3~4倍に成長。国内は7割ほどを直販で販売しているため、指令が行き届きやすいのが特徴です。それゆえ、社を挙げて営業に注力するスタンスが確立しています。この勢いを海外にも伝播させ、シェアを上げていきたい。海外は代理店販売が主ですから、コントロールが難しい側面がありますが、注力したいと考えています。
直近では、いわゆるトランプ関税の影響を懸念しています。ただ、アメリカ国内での住宅建設は活気づいていて着工件数は安定していますから、建設機械の需要が落ちることはないと予測しています。
ショベルカーに特化すると、ここ数年、販売出荷台数は2万~2万5000台の間を推移しており、安定していると言えるでしょう。日本はどうしても災害が多く、大きな被害が発生するたびに各地で復旧工事が行われるので、この点も関係しています。一方でレンタルに関しては、ややだぶつき気味。この辺りは注視していかなければいけません。
自動車業界と同様、最終的にはすべてのショベルカーが電動になるだろうと考えています。ただ、それはもう少し先になるでしょうから、油圧ショベルカーも引き続き性能を磨いていくことが肝要で、しばらくは電動と油圧の両輪で開発を進めていく予定です。
電動において課題なのは、電池のコスト。リスク回避のため安価な海外製電池を使う考えはありませんが、どのようにしてコストパフォーマンスの高い電池を確保するか、思案を続けています。大型よりもまずは小型から普及を進めるべく、今年度に13.5トンのショベルカーを展示会へ出展する計画です。
また、現場における充電設備の充実も欠かせません。首都圏の大規模な現場であれば、電源の確保はそこまでハードルが高くありませんが、地方の小規模な現場では難しい。まずは一部から導入が進み、建設現場全体に普及するのは10年後くらいを想定しています。
はい。自律化と遠隔化の背景にあるのは、「少しでもオペレーターが楽になるような技術を搭載したい」という想いです。販売先の意思決定者はもちろん、実際にショベルカーを運転する人から評価されるものを作りたい。ですから、何よりも操縦性の高さや快適さを重視しているのです。
当社の主力製品である油圧ショベル「LEGEST(レジェスト)」シリーズはまさに、オペレーターファーストで作ったもの。レジェスト発売以降、現場で乗ってみて良さを感じたオペレーターから「すごくいいショベルだから、うちの会社に営業に来てよ」という声をいただくことが増えました。開発者冥利につきる、うれしい反応ですよね。開発のベースにはいつも、「いかに現場で喜ばれるか」という判断基準があります。
建設資材の高騰や人材確保などの問題で、予定よりも竣工が遅れてしまいましたが、横須賀工場の稼働が全社に与える影響は大きいと考えています。千葉工場では20トン前後のタクトタイムが比較的短い製品を量産し、横須賀工場では大型や応用機など、タクトタイムが長めの製品を手動も取り入れながら製造していきます。千葉と横須賀ですみ分けし、製造効率を上げてランニングコストを下げるのが狙いです。
千葉工場では溶接作業の完全ロボット化に向けて活動を推進し、デジタル化によって製造工程を管理しており、同様のシステムを横須賀工場にも導入します。2026年度の売り上げをガラリと変えるサクセスファクターとして、期待しています。
先ほどお話した小型電動ショベルカーの発表と、レジェスト8型機の発売が目玉です。6型、7型へのお客様からの評価が高かったぶん、品質をしっかりと維持しながらも、使いやすさをさらに追求しました。操縦性の高さはもちろん、燃費を上げてさらなるコスト削減にも寄与します。現場で使っていただければ、良い評価をいただけると確信しています。今年度は自信作である8型機をアピールして、まずは国内で盛り上げていきたいですね。
同時に、他社に先んじた技術開発にも注力して、いち早く市場へ訴求していきます。例えば昨年の展示会で発表した、生成AIの技術を用いた操縦システムです。めまぐるしく進化するAI技術を、建設機械にどう生かせるか。開発者には常にアイデアを磨き続けてもらい、経営者としてそこに少しでも光るものがあれば、ピックアップして注力したいと考えています。
アスファルトフィニッシャなどの道路機械分野を強化する計画もあります。現状、売り上げの97%を油圧ショベルカーが占めていますが、ラインアップを増やしたり、技術開発を進めたりして、道路機械のシェアを上げ、利益を高めてもう1つの事業の軸としたい。それには、海外への展開が欠かせません。営業部門の専門性と営業力の向上に力を入れていく算段です。
加えて、優秀な人材を獲得するための社内改革も進めます。業界的にどうしても保守的で古い体質になりがちですが、これからの時代はそれではいけない。人事や評価制度を柔軟にし、働きやすい魅力的な会社に変えていくことが、私の役割だと思っています。