住友建機株式会社SUMITOMO
技術者魂が新しい領域をつくり上げる新型ショベルの開発にかけた挑戦と情熱の軌跡

スピード、燃費、
作業性!
「限界突破」
「全方位進化」
を目指して

プロジェクトマネージャー
尾崎和俊

住友建機は2016年秋、特定特殊自動車排出ガス規制(オフロード法)2014年基準に適合した新型油圧ショベルを発売し、現行機(6型)をフルモデルチェンジ(7型)した。
ラインアップは「SH250‐7」(25t)、「SH330/350‐7」(33t)、「SH460/SH470‐7」(47t)の3機種。
「限界突破」「全方位進化」―。この2つのキーワードをベースに開発が進められた7型機。現場ではどのような“ものづくり” が行われたのか。開発に携わった9名に、誕生までのドラマをインタビューした。

第1開発グループ
鈴木義信

限界突破を示す代表例の1つが、油圧技術の限界を突破するために初搭載されたフル電子制御ポンプだ。
グループリーダーの尾崎和俊は「スピード、燃費、作業性をいかに向上させるかというテーマの中から選ばれたのが、電子制御でした」と説明する。

主任技師の鈴木氏は続けて、「先行して取り組んでいた研究開発部と協力して、試作機で制御の修正や最適化チューニングを何度も繰り返し、ついに電子制御の開発に成功しました。新しい試みでしたが、得られたものは大きかったです」
さらに7型機では、オフロード法をクリアするために、エンジンに尿素SCRシステムを初採用した。しかし、尿素を使うことによるコストの上昇や、補給に手間がかかるといったユーザーの視点も考慮しなければならない。

第1開発グループ
宍倉裕延

エンジン関連の設計に携わった宍倉裕延はこう語る。
「そこで尿素タンクの容量を大きくして、補給回数を減らすとともに、尿素の消費量自体も低減させることができた結果、機械全体のランニングコスト(燃料消費量及び尿素消費量)を低減させられ、満足のいく結果になりました」

第2開発グループ
花池宏文

大型機のエンジンレイアウトを主に担当した花池宏文は、この話をうけて「尿素タンクから尿素噴射システムまでのレイアウトでは、スペースが限られているため、各種試験をして、満足のいく性能を得られるまで何度も再設計を繰り返しました」と、振り返る。

第2開発グループ
北村和彦

さらに、大型機の構造物の設計を手がけた北村和彦氏はこう話す。
「現行機のサイズの中に尿素タンクや、SCRシステムを搭載したハウスフレームを載せるための強靭なプラットフォームを設計することが私の使命でした。また、作業時に最も負荷がかかるアタッチメントや足回りをメインに構造の見直しなどを行い、大型機の耐久性のアップを図りました。その際には他社機のクリニックテストを実施し、それ以上の耐久性を確保できるような設計をしました」
初搭載という点では、住友独自の革新油圧システム「SIH:Sα」(シーズアルファ)も特筆すべき点だ。フル電子制御油圧ポンプにより緻密に流量コントロールを行い、スピード作業と低燃費を高次元で両立させた。

第2開発グループ
山本崇司

大型機の油圧レイアウト設計、操作性、燃費改善のための実機チューニングを担当した山本崇司は「メイン機種の35tで、燃費を維持しつつ作業性を高めるために、電制化したポンプとコントロールバルブのソフトをつくり込むことによって、目標に向けて設計していきました」と力を込める。

新型油圧ショベル「7型機」は、燃費効率を飛躍的に高め、大幅な低燃費を実現した新型クリーンエンジンを搭載。すぐれたパワーとレスポンスをかなえている。

お客さまに満足
いただくために、
チームワーク
を発揮

第1開発グループ
西川原理一

中型機の改善にも熱を入れた。
油圧関係の担当で、操作性や燃費の調整業務に携わった西川原理一は語る。
「中型機である20tの調整には苦労しました。なぜなら20tは流量が少ないこともあり、圧力損失を低減しても燃費の改善にはあまり効果がないからです。そこで電制ポンプをきめ細かく制御しました。」
西川原の話をうけつつ、中型機の旋回フレーム部分の設計を担当した入社4年目の佐々木友昭は、自分の役割を意識しながら、開発に携わったという。
「旋回フレームのメンテナンス性を高めるため、強度を落とさずに開口部を最大限大きくしました。さらに、上部旋回体と下部走行体をつなぐボールレースと呼ばれる部分を、25tで新規に設計することによって、現行機よりもさらなる強度の改善ができたと自負しています」
このように住友建機は柔軟に進化し続けるために、若手を抜擢する。

第1開発グループ
佐々木友昭

「私は入社して間もないうちから、新規部品の開発に携わることができました。こういう会社はほかにはないのではないかと思います。若手のときから自分の意見を言え、受け入れてもらえる環境があります」(佐々木)
技術者の真剣なぶつかり合いに社歴は関係ない。斬新なアイデアや発想、優れた技術であれば若手の意見でも受け入れる風通しのよい開発風土が、住友建機にはある。これも住友の強さの一つだ。

会社が
一丸となって、
新製品開発に
取り組む

応用機グループ
湯澤良充

「応用機に求められる細かい仕様は、営業やマーケティング部門と話し合いながら決めます」と話すのは、応用機グループ技師の湯澤良充だ。
「例えば、グラップルでつかみながらブームを上げるとスピードが遅くなるため、それを改善するために開発したのがGCHC(グラップル クローズ ホールディング サーキット)機能でした。
遅くなる原因はグラップルの操作ペダルを踏みながらブームを上げているためであり、踏まない時のスピードと、踏みながらのスピードをまったく同じにしようという目標で進めました。これも非常に難しい課題でしたが、最終的にスピードは、制御していない時に比べ1・6倍の速さが出るようになりました」
しかし、一番に優先するのはお客さまにとっての価値だ。山本崇司はお客さま満足のために重ねた討論を次のように振り返る。
「私はよく操作感のつくり込みで議論していました。操作感の味付けには人それぞれ好みがあります。アタッチメントの動きのバランスで、アーム寄りのほうが好きな人と、バケット寄りが好きな人、ブームがもう少し上がったほうが好きな人など。このように性能担当者のつくり込みの違いで機械の動きが変わってくる。それをプレゼンし合って、どちらがお客さまに求められているかを議論する。お客さまの作業を見ながら、こうしたほうがいいとか、ああしたほうがいいとか。けっこうバチバチとやり合いました(笑)」

7型機は、このように開発陣がそれぞれに知恵を絞り、高い技術力とチームワークを総結集させて誕生した。

※掲載内容は情報誌発行当時(2017年10月)の情報です。