住友建機株式会社SUMITOMO
グッドデザイン賞を獲得した住友建機の油圧ショベル技術者とデザイナーから、その開発秘話を聞きだした

技術者が発想する
理想の
“油圧ショベル”
を表現

2007年、住友建機の油圧ショベル『LEGEST シリーズ・SH200-5型』が、グッドデザイン賞を受賞。以降、『SH135X-6型』、『SH250-7型』と3世代連続で受賞している。

この快挙は、住友建機・技術陣と、デザイン会社である株式会社GKインダストリアルデザインの“パートナーシップ” の賜物といえる。そこに至るまでの開発とデザインには、どのような努力があったのだろうか。

「住友建機が製品デザインに求めるものは、やはり、弊社・技術の特徴でもある“操作性” “燃費” “安全性” を、デザインに表現してもらうことです」
こう話すのは、住友建機・開発グループの主任技師・三須伸介だ。

住友建機は、奇をてらった不思議さや面白さではなく、その時代のスタンダードとなるようなデザインを目指している。

油圧ショベル5型のときからエクステリアデザインを担当しているGKインダストリアルデザイン・若尾講介さんは、デザインの進め方をこう説明する。
「最初に提示いただいたデザイン案をベースに、意見をかさねながら、デザインをブラッシュアップさせ、一緒につくりあげていく手法をとっています。5型のときも、そこに込められた設計思想やコンセプトなどを、ひとつひとつ確認させていただくところからスタートしました」
技術者が“思い” と“狙い” を語り、デザイナーがそれ受け止めて、提案と話し合いを繰り返しながら形を作っていく。 これが、魅力的な製品を生み出す、住友建機の開発方程式だ。

オペレーターの
誇りと
公共性を両立

いざ、デザインを考える段になると、油圧ショベルの特殊性に頭を悩ますことになる。乗用車のデザインであれば、“万人に好かれるよりも、誰かに気に入ってもらえるマニアックさ” が重要になる。
一方、公共交通のデザインは“その時代の風景をつくること” “風景の中で道具として機能していること”が要となるからだ。

「ショベルは、その中間といえます。オペレーターが誇りを持ち、“このショベル” で仕事をしたいと思えることが大切であると同時に、街の中で住友建機のショベルがどう見えるかという視点も忘れてはなりません。 両者のバランスをいかにとるかが非常に重要だったのです」(若尾さん)

操作性と
安定性の高さで
顧客満足を追求

バランスだけでなく、性能面も考慮に入れ試行を重ねた。例えば、動きの良さをデザインに反映させなければならない。それを実現するには、相反するようではあるが、安定感を出す必要がある。
「例えば、スポーツカーなど動きが良い乗り物ほど、安定感のある形をしているのは、性能とデザインが比例している証拠なんです」(若尾さん)

この話をうけて、三須は「確かに、安定感を表現するには、台形形状にする必要があります。しかし、それが難しい。油圧ショベルの後ろはカウンターウェイトといって、本来重りの役割を果たしています。そのため容積を稼ぎたい。
また、排ガス規制の関係で後処理装置をおさめるスペースも必要です。かといって、後部の幅を拡げて容積を稼ぐと旋回半径が大きくなってしまう……。
当然ながら生産性やコストも無視できません。いつも、その点でGKデザインさんとせめぎ合っています(笑)」と、話す。

しかし、基本的なコンセプトがブレることはない。 “お客様第一主義” を貫く技術力と、それをデザインに落とし込む設計思想が、グッドデザイン賞受賞に結びついたといえる。

※掲載内容は情報誌発行当時(2019年9月)の情報です。