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住友建機の役に立つ情報誌「POWER」

【Vol.132】事業承継を成功に導くための方程式

会社を後継者へ承継し、さらに発展させるための基盤づくりをする。「事業承継」は経営者が成すべき最後の大仕事ともいえる。後継者として「誰」を指名すべきか? また経営者として育成し、社内外と連携を取り、円滑にバトンを手渡すために何をすべきか? 前号に続き、中小企業診断士として数多くの事業承継、M&Aに携わってきた大谷金久氏の監修のもと、事業承継の実践方法について解説する。

事業承継お助けマン 
大谷経営コンサルティング 代表
大谷金久

実践編

成功への3ステップ

 前号、POWER131号において事業承継を円滑に行った3社の成功例を紹介した。簡単に振り返ると、いずれのケースも十分な準備期間を持ち、後継者の育成を図り、周囲との関係を維持、改善しながら時間をかけて事業承継に成功している。
 自分が健在なうちはまだまだ経営権は渡せない──。実はその考えは誤りで、現役のうちから準備が必要なのだ。「事業承継は5年以上、できれば10年の期間を持って準備すべきだと考えます」と数多くの事業承継を指導してきた大谷金久氏が語る。
具体的に事業承継を進めるにあたり、大谷氏は3つのステップを推奨している。STEP1は「現状把握」で会社を分析する。会社の価値、キャッシュフロー、将来性を確認する。STEP2は「後継者・承継方法の確定」をする。血縁に跡継ぎ候補はいるのか、または社内の人材を指名するのか。STEP3は「事業承継計画書の作成」を行う。時間軸ですべきことを明らかにし、円滑に事業承継を進められる。
 本特集では成功する事業承継計画のため「3つのステップ」を解説していく。


STEP1 「現状把握」のため押さえるべきポイント

見切り発車はタブー まずは現状把握から

 現状の把握や将来の見通しを明確にすることは事業承継計画づくりにおいて不可欠。具体的には表のように3つに分類できる。まずは会社の分析をすること。従業員数、資産、キャッシュフローなど現状と今後の見込みを確認する。次に人間関係についても把握。家族、役員、従業員、株主など会社に関わる全ての人について洗い出す。関係者の株式の保有状況についても確認しておくべき。最後に経営者自身の個人資産の状況を確認する。先々に起こる資産の承継にあわせ、妻や子供たちへどのように配分するかについて、遺言書などを活用する。

STEP2 誰に、いつ承継させるか?家族内、社内でまとめる

突然の承継は失敗を招く

 事業承継は何をおいても後継者選びが重要だ。誰にするかを決定した時点から、事業承継計画がスタートするといってもよい。もしも事業承継の準備をしないまま経営権が委譲すると、後継者の判断力がそぐわない、取引先との友好関係を築けないなど、経営が不安定になることもあり得る。
 家族会議等で長男を後継者にすることが決まったら、まずは資質や経営者としての力量を把握する。それらを加味した上で事業承継計画を作成。計画の1年目には社内役員、従業員に事業承継計画を公表する。計画の5年目には長男を後継者とすることを取引金融機関、取引先企業に伝達する。一方で長男は計画の1年目に取締役、3年目に専務、5年目に社長に就任し、段階を経て権限を委譲する。所属する部署については、営業部門、本社管理部門と各部門をローテーションし業務を学び、社内の人間関係も構築する。

  • 具体例:A社の場合

後継者候補に関する状況
後継者候補は長男。長男は承継の意欲はあるが、最近まで取引先に勤務していたこともあり、A社勤務の経験が浅く社内での認知度が低い。また、経営に必要な知識も不十分。

STEP3 時間を設定して実際に事業承継計画書を作成する

計画書に落とし込むと全体が見えてくる

 事業承継を短期で実現することはかなり難しい。単に経営者が交代するのではなく、自社株式や資金といった資産の承継、目に見えにくい経営資源、すなわち会社の強みの承継といった部分も併せ持つためだ。
 大谷氏は「経営者が先代から事業を引き継ぐと、『経営力の発揮』『取引先との関係の維持』『一般従業員との関係の維持』といった点に苦労をするケースが多くなります」と語る。これらを身につけるには一朝一夕では叶わず、5年から10年の時間が必要となるのだ。
 持ち株の贈与やそれに関わる税金、また後継者以外への資産の配分といったことも事業承継のポイントといえる。承継後の人間関係を丸く収めるためにも、事業承継計画書に沿った計画が必要である。
 さて、実際の事業承継計画書の作成の方法だが、まずは現状把握と展望が必要となる。それらがそろったら、計画書の「会社」の欄から先に埋めていく。大きなポイントとしては後継者に経営権を渡すタイミング、ならびに株主からの自社株式取得だ。株式取得のための資金調達も考慮しておきたい。
 続いて現経営者と後継者の計画を定める。両者は持ち株の贈与など互いにリンクしている箇所も多い。役職の異動など、計画書に記しておけば、具体的なビジョンを共有できる。
 経営者は「公正証書遺言書」を作成するとよい。後継者だけでなく、他の相続人に配慮して相続でもめないようにするためだ。
 後継者は社内の各部署と連携を深め、また経営者の理念、ノウハウ、ネットワークなど自社の強みを承継するように努める。社外では経営革新塾に参加するなど、経営者としてスキルを習得することも求められる。
 上記を参考に自社の状況に当てはめ、実際に事業承継計画書を作成していただきたい。

  • 作成のポイント

・関係者別にすべきことを明確に
・後継者の教育は社内、社外で行う
・相続の対策も同時にすすめる

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