住友建機株式会社SUMITOMO

【Vol.134】
従業員の自動車事故…!…
“リスク”と対応策

自動車事故は後を絶たず、安全のため道路交通法ならびに交通関係法令の改正が幾度も行われている。
従業員が現場への移動、営業、または通勤などで車を使用しているなら交通事故は他人ごとではなく、事故を起こし加害者となれば、従業員本人はもちろん、企業としてもその責任を問われる可能性がある。
従業員の交通事故が会社に与える影響とは? そのリスクと対応策について、あらためて確認したい。

監修:- Professinal Agency - ノバリ株式会社 副社長 小林竜太
イラスト:佐藤竹右衛門

知っておきたい! 交通関係法令改正
悪質・危険な運転者に対して厳罰化!

 昨年度も50万件近くの交通事故が発生した。業務に車を使用する企業の経営者であるならば、まずは、ここ数年の法令改正によって、飲酒運転、無免許運転、居眠り運転、心身疾患などを原因に引き起こされた事故は、悪質な危険運転とみなされ、厳罰化の傾向にあることを覚えておきたい(下記年表を参照)。特に、運輸業・旅客業には、厳しい行政処分が科せられ、業務に法令違反があれば、資格が取り消される、つまり倒産につながることとなるのだ。

少しでも業務使用があれば会社の責任は免れない

 建設業も他人事ではない。過去にはてんかん患者がクレーン車を運転して死傷事故を引き起こした例がある。従業員が現場まで車で移動している最中に事故を起こす可能性も考えなければいけない。建設業に携わる経営者は、事故が発生した場合、どんな責任を会社が負うべきなのか把握しておく必要がある。
 従業員が交通事故を起こした場合、その車が社有車で業務使用であったなら、会社が全面的に責任を負うことは明白で、企業として責任があると判断された場合には、会社は「民事」「刑事」「行政」の観点から重い法的責任を問われる可能性がある(下図表を参照)。
 ただ、マイカー使用時の事故責任については判断がしにくいところがある。実は建設現場では、現場まで公共交通機関を使えなければ、マイカーで移動するというケースが多い。また日頃から会社への通勤にマイカーを使用していたり、急遽、そのまま取引先や現場へ行く必要がある場合も出てくる。
 そんな時に従業員が事故を起こした場合、マイカーの運転が少しでも業務に関わっていれば会社の責任が問われることとなる。実は「通勤のマイカー使用を黙認」していた時や、「まったくの私用」で使っていた場合も、会社に責任がおよぶ可能性がある。事故の発生状況と企業責任の関係を下記に一覧としたので確認してほしい。

企業責任を認識して、事故リスクに備える

 従業員の自動車事故を考えると、多くの企業経営者は「社有車」の使用については、リスクを感じて万全の体制を敷いていることだろう。
 ご存じの方もいると思うが、従業員が自動車事故を起こし、加害者となった時には、会社には「使用者責任」と「運行供用者責任」が法的に発生する(下図表を参照)。大きな事故になればなるほど会社としての損害賠償責任も比例するので、それを未然に防ぐためには、社有車の「管理規定」をつくる必要がある。その作成は、車の管理方法と管理者、車のカギの管理方法と管理責任者、使用目的を業務のみとする、使用手続き……をしっかりと明記するなどがポイントとなる。

規定づくりを徹底!従業員のマイカー使用

 一方、盲点となりがちなのが従業員の「マイカー」使用についてである。全国に保険代理店ネットワークを持つノバリ株式会社・副社長である小林竜太氏は、こう説明する。
「多くの企業と接すると、古くからのマイカー使用が慣例化しており、実は社内でなんの決まりもない、という会社が多い傾向にあると思えます。このリスクは企業経営にとって計り知れないものとなりますので、社有車の場合と同様、早急にマイカー使用についての規定づくりをする必要があります。そしてその規定によって、企業としての管理の実績をつくり出すことが大切です。現在、お付き合いされている保険代理店に尋ねてみれば、マイカー使用について、管理規定のひな形などを用意してくれるはずです」
 小林氏によると、現状、各保険会社では顧客の事故発生を未然に防ぐためのサポートを強化しているとのことで、そのために、顧客企業の社内ルールづくりから、社員の安全運転教育まで、事故防止についてのさまざまなアドバイスを丁寧にしてくれるそうである。

マイカー管理規定で事故リスクを回避する

 では「マイカー管理規定」作成のポイントを考えていきたい。企業としてのリスクを減らすという観点から大切なことは、まず、従業員に任意保険に入ってもらうことを明記することだろう。もしもの場合を考えれば、特に対人対物賠償保険は当然無制限とさせる。次には規定のなかで使用目的を明確に限定することである。前述した通り、従業員が業務でマイカーを使用した場合、事故がどんな状況で発生したとしても、程度の差はあれ企業としての責任が生まれる。そのリスクを避けるためには、管理規定に業務でのマイカー使用を禁止し、認めるのは「通勤のみ」と明記することである。また、それも許可申請制として、作成したマイカー管理規定を理解させた上で、従業員に管理規定を遵守する旨の「誓約書」を提出してもらうことが望ましい。左上に管理規定と誓約書の要点とサンプルを用意したので、参考にしてほしい。
「社有車、マイカーともに任意保険への加入は重要です。従業員が人身事故を起こしてからでは間に合いません。会社のリスクを減らすためにも、是非、徹底してください」(小林氏)
 最低限で加入すべき任意保険の内容について左下にまとめたので確認いただきたい。

体制づくりの4STEP

 従業員がマイカーを利用すると、どうしても業務と私用との線引きが曖昧になってきてしまう。そこで前述したように、労使双方が認識を共有するといった意味でも、管理規定を明文化し、どこまでが業務、どこからがプライベートであると線引きをしておく必要がある。
 ただ、従業員の自動車事故から会社を守るためといっても、マイカー使用について任意保険の加入を義務化する内容などを会社側が一方的に押しつければ反発が出るだろう。マイカーを通勤などで使用する許可を出す場合には、会社としてもそれによる手当などを支給することを検討して、従業員にも納得してもらった上で、リスクを回避する体制をつくっていきたい。

安心・安全な体制は、段階を踏んで順次つくる

 そこで考えたいのが、4つのステップによってリスクと状況を従業員と共有しながら、自動車事故対策の安心・安全な体制を整えていくことだ。
 右に図表を用意したが、まずは「現状の把握」からはじめて、「規定の明文化・運用体制の見直し」「管理の徹底」「危機管理対策」と進めていくのがいい。STEP1~3までは、一度実施・決定してしまえば、あとは徹底すべきルーティン業務である。STEP4については運用に関わる部分ともいえるが、安全教育とともに、従業員の健康状態の把握は、事故のリスク管理にも大切なことなので、社内の健診実施などと併せて徹底していきたい。

自動車事故から会社を守る

 自動車事故のリスクと対応策について考えてきたが、どんなに体制を整備しても、些細な不注意で事故は起こるもの。
 従業員から交通事故の第一報が入った場合は、タイミングを失することなく適切な手順を踏んで処理に当たる必要がある。事故の状況を把握した上で顧問弁護士に相談する、保険会社に連絡をする、被害者に誠意を持って対応する、示談成立に向けて努力する……など、なすべきことは数え切れない。
 ちょっとした対応の間違いで、風評が立ち、取引先からの信頼を失い、築き上げた企業ブランドに傷をつけ、業績が一気に悪化してしまうといった可能性も有り得る。
 企業経営者としては、もしもの時の備えは重要だ。最後に、自動車事故から企業を守る「正しい対応五カ条」を考えたので、社員全員で共有し、リスク管理を徹底しておきたい。

こばやし・りゅうた

ノバリ株式会社は全国規模で展開する保険代理店。専門知識を持つプロが在籍し、法人、個人を問わず損保、生保を通じてサポート。法人向けには賠償保険等を通じて企業のリスクに対応してきた実績を持つ。各種相談はホームページより随時受付中。
ホームページ http://www.novari.co.jp