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安藤 優子

与えられたポジションの幸福を悟った日

「アキノ大統領が初来日した時のリポート、それがある意味私の転機でした」

当時、フィリピンでは民衆の期待を背負って登場したはずのアキノ大統領に刃をむけるクーデターの噂が流れていた。しかもその首謀者は大統領の右腕とされたラモス参謀長官とエンリレ外務大臣。初めて大統領が日本へ飛び立とうという比国の空港では、渦中の3人が顔を揃え、異様な緊迫感が辺りを支配していた。

「私は、どうしても首謀者とされる二人に直接クーデターの噂をぶつけたかったんです。でも報道陣への規制線が張られていて、二人のところまで行けないんですよ」

その時、アキノ大統領が歩き始めた。他の報道陣は一斉に大統領を追い始める。その瞬間、なんと安藤さんは規制線をくぐり、エンリレ氏とラモス氏に向かって走りだしたのだ。それは
警備員に、いつ銃で撃たれても不思議はない危険な行為だった。
「夢中で二人のもとへ走った私はエンリレ外務大臣に『あなたが首謀者として、
クーデターを起こすという噂は本当だろうか』とマイクを向けたのです。すると彼が言ったんです。『No Talk No Mistake』と」

「No Talk No Mistake(言わないことは間違いを犯さない)」つまりクーデターを認める一言だった。すぐさまAP通信やロイターなどからそのスクープは一斉に「Yuko Ando Says」の書き出しで世界中に打電された。

「私はやっとその時、取材の意味を飲み込めたんです。今までは自分の中に聞きたいことなんてなかった。それがこの時口をついた言葉は私自身が本当に聞きたいことだったんです。
『取材とは自分の知りたいことを突き詰めていくことなんだ』初めて頭ではなく感覚で掴むことができましたね。取材では歴史の一部を引き出すことができる。そのポジションに自分がいるという幸福に初めて気づいた取材でした」

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